生化学

生化学2 エネルギー代謝と糖 解糖系(発酵)

tom

・ヒトも糖を発酵するー解糖系

・乳酸を作ることで発酵を促進する

・解糖系では糖1分子から12ATPのエネルギ―通貨を作る

・乳酸が蓄積するのは・・・・

・乳酸はガン発生のキープレイヤー etc.

・乳酸の発生を止めるとガンは縮小する

・乳酸とランドル効果

・解糖系⇒TCA回路の関所:ピルビン酸脱水素酵素(PDH)

・ピルビン酸脱水素酵素(PDH)をブロックするシックネス・サブスタンス

・ピルビン酸脱水素酵素(PDH)の補助因子、補酵素

・Wernicke脳症、脚気(かっけ)は何故起こるのか?

・ヒ素中毒とピルビン酸脱水素酵素(PDH)

生化学②エネルギー代謝と糖ー解糖系

今回は『解糖系』。

非常に重要な糖のエネルギー代謝の最も最初の部分。

0:24

植物は糖質と酸素を私たちに提供してくれる。

これは、大気中のCO2、水分、太陽エネルギーを元にして糖質(ブドウ糖)、酸素を作ってくれる。

これを『同化』と呼ぶ(CO2からブドウ糖を作ること)。

これは植物の、動物でいうTCA回路みたいなもので、カルビン・ベンソン回路というCO2からブドウ糖を作る回路がある。

1:22

では、動物は?

植物からできた糖質(ブドウ糖)を元に、ブドウ糖を分解していって自分たちのエネルギーにしていく過程。

そして、CO2を産生していく。

以上の循環がずっと続いてるということ。

動物の場合は糖を分解していくので、これを『異化』という。

1:55(酵母菌)

糖のエネルギー代謝の最初のステップで、一番大事な解糖系ですが、酵母菌も同じようにブドウ糖を分解していく過程がある。途中までは人間と全く一緒。

酵母菌:糖をエネルギー源として発酵する。そして、この発酵で『ピルビン酸』という物質が中間産物でできて、最終的にはアルコール(エタノールとCO2)を産生する。

なので、ビールやワイン、日本酒などが糖を利用して酵母菌がお酒を作ってるという過程になる。

2:43

ただ、人の場合。

人の発酵というのはピルビン酸までは一緒だけど、この先が違うということになる。

それを詳しくやっていきます。

3:02

人も発酵する。

グルコース、ガラクトース、フルクトースがピルビン酸に変わり、最終的に酸素がない状態では乳酸に変わる。これが人の発酵。

なので、上記の「エタノール」がこの「乳酸」に変わってるということ。

3:38〜〈映像確認〉

(3:38赤丸で囲んだ部分に注目/映像確認)グルコース、フルクトース、ガラクトースという単糖類から電子を引き抜く過程が私たちの糖のエネルギー代謝なのである。

(赤の)電子をずっとリレーしていく過程が私たちの糖のエネルギー代謝の過程で、ピルビン酸にまず代謝して電子をずっと受け渡していく。

4:18〈映像確認〉

『NAD+とNADH』

グルコース、フルクトース、ガラクトースから電子を引き抜いてリレーしていく過程でビタミンB3の誘導体であるNAD+(ナイアシンアミド)に電子を受け渡して、NADHという形になる。

そして、NADHというのは電子を結合させて、この後酸素があればミトコンドリアの中に電子を運んでいくということになる。

酸素がない場合は、NADHが電子を受け取った後、受け取ったままいき場所がなくなるということになる。

行き場がなくなってしまうと、このまま電子を次に受け渡そうとしてもNADがNADHとなり、すでに電子を結合した形なので電子を受け渡せなくなる。

つまり、糖を分解してエネルギーにすることができなくなるということ。

5:50

そのために、NADHはNAD+にまた変換しないといけない。

その一つの方法(詳しくは後述)がもう一度電子をどこかに与えて、NAD+に戻す。

そして、このNADをまた使って糖から電子を引き抜くという営みを続けられるということになる。

6:22

そして、人の場合はこの電子をNADHから受け取るのが乳酸。ピルビン酸が電子を受け取ることで乳酸になる。

酵母の場合は、この乳酸の部分がエタノール(アルコール)になるということ。

6:44

以上のような、これらが解糖系と言われるもの。

グルコース、ガラクトース、フルクトースはヘキソースと呼ばれるCが6つあるパターン。これがどんどん代謝されていって、最終的にピルビン酸になる。

ピルビン酸から次・・・

・酸素がある場合:ミトコンドリアに電子のリレーが続く。

・酸素がない場合:酵母のアルコール発酵と同じように、人間も発酵を行う。それが乳酸発酵。

7:30

エネルギーは糖(ブドウ糖、果糖、ガラクトース)に電子の形で蓄積してる。

この電子を引き抜くことで、私たちはエネルギーを作っていく。

電子のエネルギー運搬隊がNAD+、FAD+というもの。

NADはビタミンB3、FADはビタミンB2から誘導されるもの。

なので、このエネルギー代謝にどうしてもビタミンが必要という理由はここにもある。ビタミンB3やB2がないと、せっかく糖があったとしてもエネルギーとして利用することができないということになる。

そして、そこにNADと電子がくっついてNADHとなる。そこに酸素があればこれが電子伝達系(ミトコンドリアの中のエネルギー産生所)に電子がリレーされていく。

8:47

私たちの生命の営みを、私はいつも「糖のエネルギー代謝」という言い方をしてるが、もっと厳密な言い方をすれば・・・エネルギーが凝縮してる食物の中にある電子(糖の中にある電子)を取り出してリレーしていく過程で実は私たちは多大なエネルギーとCO2というミラクル物質を作る。

これが、人の生命の基本的な仕組み。

9:24〈図示/映像確認〉

【解糖系でのエネルギー(ATP)生産について】

細胞の中の細胞質というところでグルコース(単糖類であればグルコースじゃなくても)が最終的にピルビン酸という物質になる。

その先は先述のように酸素がなければ乳酸になる。

この過程で実は2つのATPというエネルギーが投入される。エネルギーが投入されて消費される。

ところが、その途中でこの倍のATPが産生される。

なので、差し引き2ATPということ。

そして、電子を受け取ったNADHが、酸素がある場合はこれが電子伝達系に運ばれてそこでエネルギーになる。

10:26

グルコースはCが6つ。

まず、エネルギー(2ATP)が投入されて、ADP(10:43)に変わる。この時にリン酸が外れて、グルコースの両側にPがつく。そして、それが2つに別れ、これをトライオースという(Cが3つの単糖類のこと)。

この、3つのリン酸がくっついたものがさらに代謝されていって、最終的にピルビン酸になる。

そして、この時にピルビン酸が2つできる(ピルビン酸=C3つ、グルコース=C6つなので、グルコース1分子からピルビン酸は2つできる)。

11:33

1つのピルビン酸が形成される時に2つのATPができるので、合計で4ATPができるということ。

投資されたのは2ATPなので、差し引きしてこの過程で2つのATPができる、ということになる。

11:56

電子について。

途中で電子がNADからNADHに渡される。

そして、NADHが酸素がある状態ではミトコンドリアに電子を運んで、そこで4つのATPを作っていく。

なので、この解糖系の過程では2ATP+4ATPで最終的には6ATP=6つのエネルギー通貨が産生される。

12:35〈映像確認〉

【糖のエネルギー代謝の全体の図】

どれくらいのエネルギーができるのかという全体の図(グルコース、ピルビン酸、グライコリシス(解糖系)と載ってる)。

解糖系では先述の通り6つのATPができる。

さらに、これが酸素がある状況では電子の伝達がさらにミトコンドリアに入ると、合計36ATPができる。

つまり、解糖系だけだとたった6つしかATP(エネルギー通貨)はない。

ところが、最終的にミトコンドリアまで行くと36ATPになるので、全くエネルギー効率が違うということを覚えておくこと。

13:40

今回は6ATPができるところまでを詳しくやっていきます。

13:50〈映像確認〉

糖のエネルギー代謝の全体図をまず見ていきます。

最も簡単に図示した糖のエネルギー代謝の外観図(最も分かりやすい)。

まず、ブドウ糖があり、それがピルビン酸というところまで分解されて行く。

そして、酸素がない時は発酵を行う、ということでしたね。つまり、酸素がないと乳酸に変わってしまう。

ここまでだと6ATPしかできない。

14:30

ところが、酸素がある場合はピルビン酸から電子が「TCA回路」、「電子伝達系」というところに入っていく。いずれもミトコンドリアの中にあるシステムである。

最終的に電子が電子伝達系というところで酸素に受け渡される。そこで、このエネルギー代謝は終了する。

そして、酸素に電子が渡ったところで最終的に「ATP」と「水」、そしてTCA回路からはたくさんの「CO2」ができる。

なので、ATPとミラクルホルモンであるCO2、水が糖のエネルギー代謝の酸素がある場合(しっかり糖のエネルギー代謝が回ってる場合)の最終産物となる。

15:30(乳酸脱水素酵素(LDH))

今回勉強するのはピルビン酸から乳酸までのところ。

ここで一つ重要なのはLDHというのがある。これは乳酸脱水素酵素と言われるもの。

調子が悪くなって血液検査などをする時にこの「LDH」という項目が上がる。あまり注目はされないが、例えば心筋梗塞などではこの乳酸脱水素酵素が高くなる。医師もLDHは心筋梗塞または肝臓の障害で上がるということくらいしかおそらく理解してないと思う。

しかし、そうではない。これをよく見ると、ピルビン酸から乳酸に行く時には必ずLDH(乳酸脱水素酵素)が活性化する。

これが活性化してるということは、つまり酸素がないから。酸素があればTCA回路に行く。でも、酸素がないから乳酸にいく。

16:52(LDHと病態)

なので、脳卒中、血管が詰まる(心筋梗塞や腸の血管が詰まるのも)という、いわゆる酸素がなくなる状態=低酸素状態。

その時には必ずLDH(乳酸脱水素酵素)が上昇してくる。

また、低酸素で有名なものは「ガン」。

ガン細胞はどんどん増殖を繰り返していくので、ガンの中心部は特に酸素欠乏が出やすい。

なので、ガンがどんどん増殖していく過程では無酸素状態になって乳酸に変換せざるを得ない状態になるので、LDHがたくさん出てくる。

17:49

ということなので、血液検査でこのLDHが上がるということは、“解糖系が乳酸まで進んでる”ということを頭の中に入れ、では、どんな病態があるかということを考える。

これがベーシックサイエンスである。

決して、「脱水素酵素が上がる時はこれ」という風に覚える必要はない。

18:18(乳酸が蓄積する時)

「乳酸が蓄積する」というのはどういう時か?

先述の通り、身体中に酸素が行かなくなる。つまり、血管が詰まる状態。

あるいは、酸素が低下するというのは肺の障害もある。COPDと言われる状態で、呼吸がうまくできない・換気がうまくできない場合もLDHは当然上がる。

18:56

そして、運動や競技というのは無酸素運動をするし、また、激しい運動で酸素が足りなくなる、といった場合に乳酸が蓄積する。

19:22〈図示/映像確認〉

【解糖系の詳しい外観図(とてもわかりやすい)】

黒いのがC(炭素)

Cが6つあるので、ヘキソース。

19:52

この図は、グルコースが細胞に入ってどういう風に分解されていくのか?というのを詳しく描いた外観図。

・まず、細胞にグルコースが入っていく。

・細胞に入ってきた時に、まずリン酸がグルコースにくっつく。Cの6つ目のところにリン酸がくっつく。

※このリン酸はATPから来てる。エネルギーが投入されるATPからリン酸が外れて、このリン酸がくっつく。

このリン酸がグルコースの6番目のCにくっついてるので、「グルコース6ホスフェート(グルコース6リン酸)」という。

・この時に働く酵素が「ヘキソカイネース」というもの。これは非常に大事な酵素。あるいは、肝臓では、同じヘキソカイネーズのことを「グルコカイネース」という呼び方をしてる。

21:10

・「グルコース6リン酸」が「ホスホヘキソアイサマレース(グルコース6リン酸イソメラーゼ)」というもので「フルクトース6リン酸」に変わる。

PがCの6つ目についてるのでフルクトース6リン酸という。

21:36

・次にホスホフルクトカイネース1という酵素が働いて、またATPが投入され、またP(リン酸)がつく。

両方につくのはBIS(ビス)という。

なので、フルクトースの1つ目と6つ目にPがついてるので、「フルクトース1,6ビスリン酸(フルクトース1,6ビスホスフェート)」という言い方をする。

22:12

・これが次に「アルドレース」という酵素で「トライオースリン酸」というものに変わる。

・一つは「ダイハイドロキシアセトンリン酸(DHAP)」、もう一つが「グルセルアルデハイド3リン酸(GA3P)」というものに。ここで初めてCが3つになる。

このDHAPとGA3Pは相互に入れ替わるので、グルコース一つからGA3Pは実際には2つできる(Cが3つある)。

グルコースはCが6つなので、グルコース1分子からGA3Pが2分枝できる。

23:23

・次に脱水素酵素が働いて、ここでまたPが両方にくっつく。それは1番目と3番目にくっつくために「1,3ビスホスホグリセレート(1,3ビスホスホグリセリン酸)」という物質に変わる。

・そして、「ホスホグリセレートカイネース」というのが働いて「ホスホグリセレート」になる。

23:55(脱線)

これらは一つ一つ詳しく覚える必要はない。でも、こういう形で色んな酵素が働いて徐々に分解されていってる、というのは覚えておくと良い。

そして、何かの時にこれを見直すことが必要(覚える必要はない)。

「ここで使われてるんだ」というのを頭の片隅に入れておくと、何かあった時に非常に役に立つ。

24:38(23:23〜部分の「ホスホグリセレート」の続き)

(GA3Pが1,3ビスホスホグリセレート、その後ホスホグリセレートまで行った続きから)

・Pが2番目につくので「ホスホグリセレートミューテース」という酵素が働いて、2番目にPが来てるので「2ホスホグリセレート」となる。

・これに「エノレース」が働いて「ホスホエノールピルビン酸」に変換される。

・次に、「ピルビン酸カイネース」という酵素が働いて、ようやくピルビン酸になる。

25:26

簡単に、最初に外観図でブドウ糖→ピルビン酸→乳酸もしくはミトコンドリアに入る、という話をしたが、実際には上記のような複雑な反応がずっとあるということ。

25:47

・そして、ピルビン酸が酸素なしで乳酸に変わる。乳酸もCが3つ。

電子のリレーでNAD+からNADHに電子を渡したけど、このNADHが酸素がない場合はミトコンドリアに行けなくて、行くところがなくなる。それがNADHを乳酸脱水素酵素のところで乳酸に変えることで初めてNAD+を再生産できる。

そうすると、このNAD+がまた電子を受け取る媒体となって、グルコースを分解できるということになる。

26:38

なので、この乳酸が、実は酸素がなくて電子の行き場が困った時にピルビン酸に渡して変換される形。

26:59〈映像確認〉

循環を一つ一つ見ていった図(覚える必要はない)。

グルコースは一番最初ヘキソカイネース、肝臓ではグルコカイネースと呼ばれる酵素によって、まずグルコースの6つ目にリン酸がついてグルコース6ホスフェート(グルコース6リン酸)に細胞内で変換される。

27:34

そして、このヘキソカイネースをブロックする薬剤がある。これを2デオキシDグルコース(2DG)という。

これは、グルコースの代謝を抑える薬剤として使われてる。

27:59

そして、グルコース6リン酸が次にフルクトース6リン酸に変わる。

その次が比較的ポイント。フルクトース6リン酸から次のフルクトース1,6ビスリン酸に変わる時に作用する酵素が大事。

「ホスホフルクトカイネース1」と呼ばれるもの。

これは何故大事か?

ここが、解糖系のスピード、効率を決めてしまうリミッティング・ファクターと言われてる。それが、ホスホフルクトカイネースという酵素。

この酵素は、ATPが増えるとか、TCA回路でクエン酸が作られるけど、このクエン酸が増えたり、水素が増えたり、酸が増える(PHが下がる)といった時に止まってしまう。

なので、ホスホフルクトカイネースというのは色んな条件によって、酵素の作用が変わってしまうことで解糖系のスピードが変わってしまう。

29:36〈映像確認〉

【フルクトースとグルコースの違い】(図示)

上記で、グルコースはホスホフルクトカイネースという酵素がスピードを決めると話したが、フルクトースの場合はそういう酵素はない。

(詳しくはフルクトースの代謝のところで)

30:12(糖の分解(フルクトース1,6ビスリン酸から)、続き)

フルクトース1,6ビスリン酸がアルドレースという酵素によって、トライオース3リン酸になる。

そして、そのトライオース3リン酸はダイハイドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデハイド3リン酸の2つに。

30:32

グリセルアルデハイド3リン酸というのが次に、1,3ビスホスフェートホスホグリセレートという物質に変わる。

その時にGA3P脱水素酵素(グリセルアルデハイド3リン酸デハイドロジェネース)と言われる酵素が作用する。

30:59(ヒ素について)

ここで一つポイントなのが「ヒ素」。

ヒ素は毒性物質中の王様と言われるが、何故そう言われるのか?

それは、ここで(上記の部分?映像確認31:12)この酵素をブロックする。ということで、解糖系がそこで止まってしまう。

つまり、糖から電子をリレーしてエネルギーを新しく作っていくという糖のエネルギー代謝の営みの初段階のGA3P脱水素酵素のところでブロックしてしまう。

31:41(糖の分解、続き)

そして、ホスホグリセレートカイネースというので3ホスホグリセレートという物質に変わる。

その次がミューテース(ムターゼ)。リン酸の場所が最終的に3から2に変わる(2ホスホグリセレート)。

そして、エノレースで、ホスホエノールパイルヴェート(ホスホエノールピルビン酸)。

ようやくパイルヴェートカイネース(ピルビン酸キナーゼ)というものでピルビン酸ができる。

32:13(ヒ素2)

実はこのピルビン酸ができる1ステップ前のパイルヴェートカイネースを触媒する酵素もヒ素はブロックする。

なので、ヒ素は解糖系をブロックする最も強力な毒性物質と言える。

32:36

この、解糖系というのはNAD+(電子を運ぶビタミンB3)を消費する。

消費する、というのは具体的には・・・グルコースから電子をNADPに渡すのに運搬隊を使うということ。

そして、ピルビン酸からTCA回路には入れない場合=酸素がない場合はピルビン酸から乳酸に変換する。要するに、ピルビン酸に電子を与えるということでNAD+を再生産してまた解糖系を回す。

33:25

一口で解糖系と言うけど、この糖を分解していくのにも電子を受け取るNAD+やFAD+が絶対に必要になる。これがないと解糖系が回っていかない。

回っていかない=グルコースが分解されずに途中で止まってしまうということ。

そうすると、糖が分解できないので結局血糖がどんどん高くなっていくということになる。

33:58〈映像確認〉

簡単に図示したもの(上記のまとめ)。

糖が入ってきて解糖系が始まる。そして、最終的にピルビン酸ができて、ピルビン酸が電子を受け取って乳酸になることでNAD+を再生産してるという図。

もちろん、酸素があればピルビン酸はミトコンドリア内に入っていってさらに代謝されていくということになる。

生化学②エネルギー代謝と糖ー解糖系

今回は『解糖系』。

非常に重要な糖のエネルギー代謝の最も最初の部分。

0:24

植物は糖質と酸素を私たちに提供してくれる。

これは、大気中のCO2、水分、太陽エネルギーを元にして糖質(ブドウ糖)、酸素を作ってくれる。

これを『同化』と呼ぶ(CO2からブドウ糖を作ること)。

これは植物の、動物でいうTCA回路みたいなもので、カルビン・ベンソン回路というCO2からブドウ糖を作る回路がある。

1:22

では、動物は?

植物からできた糖質(ブドウ糖)を元に、ブドウ糖を分解していって自分たちのエネルギーにしていく過程。

そして、CO2を産生していく。

以上の循環がずっと続いてるということ。

動物の場合は糖を分解していくので、これを『異化』という。

1:55(酵母菌)

糖のエネルギー代謝の最初のステップで、一番大事な解糖系ですが、酵母菌も同じようにブドウ糖を分解していく過程がある。途中までは人間と全く一緒。

酵母菌:糖をエネルギー源として発酵する。そして、この発酵で『ピルビン酸』という物質が中間産物でできて、最終的にはアルコール(エタノールとCO2)を産生する。

なので、ビールやワイン、日本酒などが糖を利用して酵母菌がお酒を作ってるという過程になる。

2:43

ただ、人の場合。

人の発酵というのはピルビン酸までは一緒だけど、この先が違うということになる。

それを詳しくやっていきます。

3:02

人も発酵する。

グルコース、ガラクトース、フルクトースがピルビン酸に変わり、最終的に酸素がない状態では乳酸に変わる。これが人の発酵。

なので、上記の「エタノール」がこの「乳酸」に変わってるということ。

3:38〜〈映像確認〉

(3:38赤丸で囲んだ部分に注目/映像確認)グルコース、フルクトース、ガラクトースという単糖類から電子を引き抜く過程が私たちの糖のエネルギー代謝なのである。

(赤の)電子をずっとリレーしていく過程が私たちの糖のエネルギー代謝の過程で、ピルビン酸にまず代謝して電子をずっと受け渡していく。

4:18〈映像確認〉

『NAD+とNADH』

グルコース、フルクトース、ガラクトースから電子を引き抜いてリレーしていく過程でビタミンB3の誘導体であるNAD+(ナイアシンアミド)に電子を受け渡して、NADHという形になる。

そして、NADHというのは電子を結合させて、この後酸素があればミトコンドリアの中に電子を運んでいくということになる。

酸素がない場合は、NADHが電子を受け取った後、受け取ったままいき場所がなくなるということになる。

行き場がなくなってしまうと、このまま電子を次に受け渡そうとしてもNADがNADHとなり、すでに電子を結合した形なので電子を受け渡せなくなる。

つまり、糖を分解してエネルギーにすることができなくなるということ。

5:50

そのために、NADHはNAD+にまた変換しないといけない。

その一つの方法(詳しくは後述)がもう一度電子をどこかに与えて、NAD+に戻す。

そして、このNADをまた使って糖から電子を引き抜くという営みを続けられるということになる。

6:22

そして、人の場合はこの電子をNADHから受け取るのが乳酸。ピルビン酸が電子を受け取ることで乳酸になる。

酵母の場合は、この乳酸の部分がエタノール(アルコール)になるということ。

6:44

以上のような、これらが解糖系と言われるもの。

グルコース、ガラクトース、フルクトースはヘキソースと呼ばれるCが6つあるパターン。これがどんどん代謝されていって、最終的にピルビン酸になる。

ピルビン酸から次・・・

・酸素がある場合:ミトコンドリアに電子のリレーが続く。

・酸素がない場合:酵母のアルコール発酵と同じように、人間も発酵を行う。それが乳酸発酵。

7:30

エネルギーは糖(ブドウ糖、果糖、ガラクトース)に電子の形で蓄積してる。

この電子を引き抜くことで、私たちはエネルギーを作っていく。

電子のエネルギー運搬隊がNAD+、FAD+というもの。

NADはビタミンB3、FADはビタミンB2から誘導されるもの。

なので、このエネルギー代謝にどうしてもビタミンが必要という理由はここにもある。ビタミンB3やB2がないと、せっかく糖があったとしてもエネルギーとして利用することができないということになる。

そして、そこにNADと電子がくっついてNADHとなる。そこに酸素があればこれが電子伝達系(ミトコンドリアの中のエネルギー産生所)に電子がリレーされていく。

8:47

私たちの生命の営みを、私はいつも「糖のエネルギー代謝」という言い方をしてるが、もっと厳密な言い方をすれば・・・エネルギーが凝縮してる食物の中にある電子(糖の中にある電子)を取り出してリレーしていく過程で実は私たちは多大なエネルギーとCO2というミラクル物質を作る。

これが、人の生命の基本的な仕組み。

9:24〈図示/映像確認〉

【解糖系でのエネルギー(ATP)生産について】

細胞の中の細胞質というところでグルコース(単糖類であればグルコースじゃなくても)が最終的にピルビン酸という物質になる。

その先は先述のように酸素がなければ乳酸になる。

この過程で実は2つのATPというエネルギーが投入される。エネルギーが投入されて消費される。

ところが、その途中でこの倍のATPが産生される。

なので、差し引き2ATPということ。

そして、電子を受け取ったNADHが、酸素がある場合はこれが電子伝達系に運ばれてそこでエネルギーになる。

10:26

グルコースはCが6つ。

まず、エネルギー(2ATP)が投入されて、ADP(10:43)に変わる。この時にリン酸が外れて、グルコースの両側にPがつく。そして、それが2つに別れ、これをトライオースという(Cが3つの単糖類のこと)。

この、3つのリン酸がくっついたものがさらに代謝されていって、最終的にピルビン酸になる。

そして、この時にピルビン酸が2つできる(ピルビン酸=C3つ、グルコース=C6つなので、グルコース1分子からピルビン酸は2つできる)。

11:33

1つのピルビン酸が形成される時に2つのATPができるので、合計で4ATPができるということ。

投資されたのは2ATPなので、差し引きしてこの過程で2つのATPができる、ということになる。

11:56

電子について。

途中で電子がNADからNADHに渡される。

そして、NADHが酸素がある状態ではミトコンドリアに電子を運んで、そこで4つのATPを作っていく。

なので、この解糖系の過程では2ATP+4ATPで最終的には6ATP=6つのエネルギー通貨が産生される。

12:35〈映像確認〉

【糖のエネルギー代謝の全体の図】

どれくらいのエネルギーができるのかという全体の図(グルコース、ピルビン酸、グライコリシス(解糖系)と載ってる)。

解糖系では先述の通り6つのATPができる。

さらに、これが酸素がある状況では電子の伝達がさらにミトコンドリアに入ると、合計36ATPができる。

つまり、解糖系だけだとたった6つしかATP(エネルギー通貨)はない。

ところが、最終的にミトコンドリアまで行くと36ATPになるので、全くエネルギー効率が違うということを覚えておくこと。

13:40

今回は6ATPができるところまでを詳しくやっていきます。

13:50〈映像確認〉

糖のエネルギー代謝の全体図をまず見ていきます。

最も簡単に図示した糖のエネルギー代謝の外観図(最も分かりやすい)。

まず、ブドウ糖があり、それがピルビン酸というところまで分解されて行く。

そして、酸素がない時は発酵を行う、ということでしたね。つまり、酸素がないと乳酸に変わってしまう。

ここまでだと6ATPしかできない。

14:30

ところが、酸素がある場合はピルビン酸から電子が「TCA回路」、「電子伝達系」というところに入っていく。いずれもミトコンドリアの中にあるシステムである。

最終的に電子が電子伝達系というところで酸素に受け渡される。そこで、このエネルギー代謝は終了する。

そして、酸素に電子が渡ったところで最終的に「ATP」と「水」、そしてTCA回路からはたくさんの「CO2」ができる。

なので、ATPとミラクルホルモンであるCO2、水が糖のエネルギー代謝の酸素がある場合(しっかり糖のエネルギー代謝が回ってる場合)の最終産物となる。

15:30(乳酸脱水素酵素(LDH))

今回勉強するのはピルビン酸から乳酸までのところ。

ここで一つ重要なのはLDHというのがある。これは乳酸脱水素酵素と言われるもの。

調子が悪くなって血液検査などをする時にこの「LDH」という項目が上がる。あまり注目はされないが、例えば心筋梗塞などではこの乳酸脱水素酵素が高くなる。医師もLDHは心筋梗塞または肝臓の障害で上がるということくらいしかおそらく理解してないと思う。

しかし、そうではない。これをよく見ると、ピルビン酸から乳酸に行く時には必ずLDH(乳酸脱水素酵素)が活性化する。

これが活性化してるということは、つまり酸素がないから。酸素があればTCA回路に行く。でも、酸素がないから乳酸にいく。

16:52(LDHと病態)

なので、脳卒中、血管が詰まる(心筋梗塞や腸の血管が詰まるのも)という、いわゆる酸素がなくなる状態=低酸素状態。

その時には必ずLDH(乳酸脱水素酵素)が上昇してくる。

また、低酸素で有名なものは「ガン」。

ガン細胞はどんどん増殖を繰り返していくので、ガンの中心部は特に酸素欠乏が出やすい。

なので、ガンがどんどん増殖していく過程では無酸素状態になって乳酸に変換せざるを得ない状態になるので、LDHがたくさん出てくる。

17:49

ということなので、血液検査でこのLDHが上がるということは、“解糖系が乳酸まで進んでる”ということを頭の中に入れ、では、どんな病態があるかということを考える。

これがベーシックサイエンスである。

決して、「脱水素酵素が上がる時はこれ」という風に覚える必要はない。

18:18(乳酸が蓄積する時)

「乳酸が蓄積する」というのはどういう時か?

先述の通り、身体中に酸素が行かなくなる。つまり、血管が詰まる状態。

あるいは、酸素が低下するというのは肺の障害もある。COPDと言われる状態で、呼吸がうまくできない・換気がうまくできない場合もLDHは当然上がる。

18:56

そして、運動や競技というのは無酸素運動をするし、また、激しい運動で酸素が足りなくなる、といった場合に乳酸が蓄積する。

19:22〈図示/映像確認〉

【解糖系の詳しい外観図(とてもわかりやすい)】

黒いのがC(炭素)

Cが6つあるので、ヘキソース。

19:52

この図は、グルコースが細胞に入ってどういう風に分解されていくのか?というのを詳しく描いた外観図。

・まず、細胞にグルコースが入っていく。

・細胞に入ってきた時に、まずリン酸がグルコースにくっつく。Cの6つ目のところにリン酸がくっつく。

※このリン酸はATPから来てる。エネルギーが投入されるATPからリン酸が外れて、このリン酸がくっつく。

このリン酸がグルコースの6番目のCにくっついてるので、「グルコース6ホスフェート(グルコース6リン酸)」という。

・この時に働く酵素が「ヘキソカイネース」というもの。これは非常に大事な酵素。あるいは、肝臓では、同じヘキソカイネーズのことを「グルコカイネース」という呼び方をしてる。

21:10

・「グルコース6リン酸」が「ホスホヘキソアイサマレース(グルコース6リン酸イソメラーゼ)」というもので「フルクトース6リン酸」に変わる。

PがCの6つ目についてるのでフルクトース6リン酸という。

21:36

・次にホスホフルクトカイネース1という酵素が働いて、またATPが投入され、またP(リン酸)がつく。

両方につくのはBIS(ビス)という。

なので、フルクトースの1つ目と6つ目にPがついてるので、「フルクトース1,6ビスリン酸(フルクトース1,6ビスホスフェート)」という言い方をする。

22:12

・これが次に「アルドレース」という酵素で「トライオースリン酸」というものに変わる。

・一つは「ダイハイドロキシアセトンリン酸(DHAP)」、もう一つが「グルセルアルデハイド3リン酸(GA3P)」というものに。ここで初めてCが3つになる。

このDHAPとGA3Pは相互に入れ替わるので、グルコース一つからGA3Pは実際には2つできる(Cが3つある)。

グルコースはCが6つなので、グルコース1分子からGA3Pが2分枝できる。

23:23

・次に脱水素酵素が働いて、ここでまたPが両方にくっつく。それは1番目と3番目にくっつくために「1,3ビスホスホグリセレート(1,3ビスホスホグリセリン酸)」という物質に変わる。

・そして、「ホスホグリセレートカイネース」というのが働いて「ホスホグリセレート」になる。

23:55(脱線)

これらは一つ一つ詳しく覚える必要はない。でも、こういう形で色んな酵素が働いて徐々に分解されていってる、というのは覚えておくと良い。

そして、何かの時にこれを見直すことが必要(覚える必要はない)。

「ここで使われてるんだ」というのを頭の片隅に入れておくと、何かあった時に非常に役に立つ。

24:38(23:23〜部分の「ホスホグリセレート」の続き)

(GA3Pが1,3ビスホスホグリセレート、その後ホスホグリセレートまで行った続きから)

・Pが2番目につくので「ホスホグリセレートミューテース」という酵素が働いて、2番目にPが来てるので「2ホスホグリセレート」となる。

・これに「エノレース」が働いて「ホスホエノールピルビン酸」に変換される。

・次に、「ピルビン酸カイネース」という酵素が働いて、ようやくピルビン酸になる。

25:26

簡単に、最初に外観図でブドウ糖→ピルビン酸→乳酸もしくはミトコンドリアに入る、という話をしたが、実際には上記のような複雑な反応がずっとあるということ。

25:47

・そして、ピルビン酸が酸素なしで乳酸に変わる。乳酸もCが3つ。

電子のリレーでNAD+からNADHに電子を渡したけど、このNADHが酸素がない場合はミトコンドリアに行けなくて、行くところがなくなる。それがNADHを乳酸脱水素酵素のところで乳酸に変えることで初めてNAD+を再生産できる。

そうすると、このNAD+がまた電子を受け取る媒体となって、グルコースを分解できるということになる。

26:38

なので、この乳酸が、実は酸素がなくて電子の行き場が困った時にピルビン酸に渡して変換される形。

26:59〈映像確認〉

循環を一つ一つ見ていった図(覚える必要はない)。

グルコースは一番最初ヘキソカイネース、肝臓ではグルコカイネースと呼ばれる酵素によって、まずグルコースの6つ目にリン酸がついてグルコース6ホスフェート(グルコース6リン酸)に細胞内で変換される。

27:34

そして、このヘキソカイネースをブロックする薬剤がある。これを2デオキシDグルコース(2DG)という。

これは、グルコースの代謝を抑える薬剤として使われてる。

27:59

そして、グルコース6リン酸が次にフルクトース6リン酸に変わる。

その次が比較的ポイント。フルクトース6リン酸から次のフルクトース1,6ビスリン酸に変わる時に作用する酵素が大事。

「ホスホフルクトカイネース1」と呼ばれるもの。

これは何故大事か?

ここが、解糖系のスピード、効率を決めてしまうリミッティング・ファクターと言われてる。それが、ホスホフルクトカイネースという酵素。

この酵素は、ATPが増えるとか、TCA回路でクエン酸が作られるけど、このクエン酸が増えたり、水素が増えたり、酸が増える(PHが下がる)といった時に止まってしまう。

なので、ホスホフルクトカイネースというのは色んな条件によって、酵素の作用が変わってしまうことで解糖系のスピードが変わってしまう。

29:36〈映像確認〉

【フルクトースとグルコースの違い】(図示)

上記で、グルコースはホスホフルクトカイネースという酵素がスピードを決めると話したが、フルクトースの場合はそういう酵素はない。

(詳しくはフルクトースの代謝のところで)

30:12(糖の分解(フルクトース1,6ビスリン酸から)、続き)

フルクトース1,6ビスリン酸がアルドレースという酵素によって、トライオース3リン酸になる。

そして、そのトライオース3リン酸はダイハイドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデハイド3リン酸の2つに。

30:32

グリセルアルデハイド3リン酸というのが次に、1,3ビスホスフェートホスホグリセレートという物質に変わる。

その時にGA3P脱水素酵素(グリセルアルデハイド3リン酸デハイドロジェネース)と言われる酵素が作用する。

30:59(ヒ素について)

ここで一つポイントなのが「ヒ素」。

ヒ素は毒性物質中の王様と言われるが、何故そう言われるのか?

それは、ここで(上記の部分?映像確認31:12)この酵素をブロックする。ということで、解糖系がそこで止まってしまう。

つまり、糖から電子をリレーしてエネルギーを新しく作っていくという糖のエネルギー代謝の営みの初段階のGA3P脱水素酵素のところでブロックしてしまう。

31:41(糖の分解、続き)

そして、ホスホグリセレートカイネースというので3ホスホグリセレートという物質に変わる。

その次がミューテース(ムターゼ)。リン酸の場所が最終的に3から2に変わる(2ホスホグリセレート)。

そして、エノレースで、ホスホエノールパイルヴェート(ホスホエノールピルビン酸)。

ようやくパイルヴェートカイネース(ピルビン酸キナーゼ)というものでピルビン酸ができる。

32:13(ヒ素2)

実はこのピルビン酸ができる1ステップ前のパイルヴェートカイネースを触媒する酵素もヒ素はブロックする。

なので、ヒ素は解糖系をブロックする最も強力な毒性物質と言える。

32:36

この、解糖系というのはNAD+(電子を運ぶビタミンB3)を消費する。

消費する、というのは具体的には・・・グルコースから電子をNADPに渡すのに運搬隊を使うということ。

そして、ピルビン酸からTCA回路には入れない場合=酸素がない場合はピルビン酸から乳酸に変換する。要するに、ピルビン酸に電子を与えるということでNAD+を再生産してまた解糖系を回す。

33:25

一口で解糖系と言うけど、この糖を分解していくのにも電子を受け取るNAD+やFAD+が絶対に必要になる。これがないと解糖系が回っていかない。

回っていかない=グルコースが分解されずに途中で止まってしまうということ。

そうすると、糖が分解できないので結局血糖がどんどん高くなっていくということになる。

33:58〈映像確認〉

簡単に図示したもの(上記のまとめ)。

糖が入ってきて解糖系が始まる。そして、最終的にピルビン酸ができて、ピルビン酸が電子を受け取って乳酸になることでNAD+を再生産してるという図。

もちろん、酸素があればピルビン酸はミトコンドリア内に入っていってさらに代謝されていくということになる。

fin

34:34(慢性病と解糖系)

慢性病と言われるガン、アトピーなどのアレルギー疾患、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症といったものは自己免疫疾患と呼ばれてる。

いずれにせよ難病、あるいは原因がわからない、現代医療では治療法がないと言われてる慢性病については特徴的な代謝のパターンがある。

それは解糖系。乳酸ができる解糖系が過剰に活性化してること。

それと、脂肪・タンパク質をエネルギー源としてるということ。

具体的には脂肪のβ酸化と言われるものと、タンパク質の中の構成成分のアミノ酸である「グルタミン」。これをエネルギー源として性能してるパターンが慢性病。

35:56

そして、これと同時に細胞内で脂肪合成が上がってる。

なので、ガンや糖尿病、慢性病は細胞の中に脂肪がたくさんどんどん蓄積していく。これが慢性病の特徴。

36:23(まとめ)

解糖系が過剰に活性化して、ミトコンドリアに入らずに乳酸に変わるパターンと、脂肪が細胞の中で合成されてるというのは実はカップリングしてる(2こ1である)ということ。

36:45

【乳酸の問題】

酸素がない場合、解糖系で最終的にできる乳酸は非常にまずい。それは、病気の場を作る、あるいはガンの場を作る物質だということ。

37:07〈映像確認〉

ガン細胞を図示したものがある。

解糖系が過剰に活性化して、過剰に乳酸が産生されてる。

37:22

『乳酸はガン発生のキープレイヤー』というもの。

「乳酸は身体に良い」と一般健康常識では広まってることもあり、乳酸が病気を作る物質だと言うとみんな驚くが、病気を作る物質の理由としては以下。

まず、乳酸はダイレクトに免疫を抑制する。

免疫抑制=ステロイド、オメガ3と言われるものと一緒で身体の中でゴミが溜まった時にそれを処理できなくなる。なので、どんどんゴミが溜まってくる。私たちの身体はゴミが溜まることを非常に嫌うので、最終的にはガンになっていく。

38:29

また、さらに問題なのは、乳酸は細胞をどんどんアルカリ性にしていく。

乳酸自体は酸性だが、乳酸が細胞の中に溜まってしまうと、乳酸は濃度勾配に従って外に出ていく。

それにつられて今度は水素イオンが一緒に細胞の中から細胞の外へ出ていく。

それでどんどんアルカリ度が高まっていく。乳酸ができるほど還元状態になっていく。

39:06

そうすると、細胞は元々弱酸性でセットアップされてるので、アルカリ性になる程全ての機能は止まってしまう。

それによりストレスホルモンもどんどん上がっていく。

39:24

そして、血管をどんどん作っていく。なので、転移がしやすくなる。

乳酸がどんどんガンを増殖・転移させていく、というのはこの「血管を増やしていく」という作用。新しい血管を増やしてガンにどんどん栄養を与えていく、というのも乳酸が行ってる。

また、もちろん乳酸そのものがガンの餌になるということもガンを大きくする大きな要因となってる。

40:03〈映像確認/大事な図〉

グルコース、フルクトース、ガラクトースの単糖類がピルビン酸に変わって乳酸に変わるというのが今日のテーマの解糖系。

本来は酸素があれば、ピルビン酸脱水素酵素が働いてTCA回路、電子伝達系に入る。

40:31

それが何故解糖系だけになってしまうのか?という原因が非常に大事なこと。

特にピルビン酸がTCA回路に入ってアセチルCoAに変わるところまでが非常に大きな関門になってる。

大きな関門=ピルビン酸脱水素酵素

これが何らかの形でブロックされた場合に、ピルビン酸は乳酸に変わらざるを得ないという状況になる(ここがポイント!)。

41:10

この乳酸に変わらざるを得ない状況というのが、↓

・プーファ(特にオメガ3)

・一酸化窒素(NO):特に緑の強い野菜、硝酸態窒素、化学肥料が入った農薬、心臓の薬、バイアグラなどは一酸化窒素を発生させる

・ヒ素:解糖系の途中でもブロックするが、ピルビン酸脱水素酵素もブロックする

・乳酸:これもブロックする

・ストレスホルモン(エストロゲン、コルチゾール、セロトニン):同じくブロックする

・アセチルCoA、クエン酸:脂肪をエネルギーにした時にピルビン酸脱水素酵素がブロックされる

これらによってピルビン酸脱水素酵素がブロックされて、乳酸にならざるを得ないということ。

その場合は解糖系でたった6ATPしかできない。しかも、生体毒である乳酸がどんどんできるという状態になってしまう。

42:40(ピルビン酸脱水素酵素と補助因子)

ピルビン酸脱水素酵素が非常に重要な関門。

このピルビン酸脱水素酵素がしっかり機能するには、「補助因子(補酵素)」というものが必要になる。

それがビタミンB1、B2、B3。

B2、B3は電子を運ぶのにも必要だけど、このピルビン酸脱水素酵素にも必要。つまり、B2、B3は非常に大事だということ。

あとは、リポ酸、パントテン酸も利用されてる。

なので、ビタミンB1、特にB2、B3が不足するとピルビン酸脱水素酵素が働かなくなるので、乳酸がどんどん溜まるということになる。

43:32

症例:「60歳男性。興奮状態、不穏、錯乱状態。歩行は不安定で、奇妙な不規則な眼球運動が見られたので救急搬送された。この男性は今まで慢性アルコール中毒があった。」

この場合の診断は?(今までのベーシックサイエンスで十分に読み解ける病態)

44:08

実は、これは慢性アルコール中毒によってビタミンB1、B2、B3が不足する。それによって、乳酸がたくさんできる(解糖系が過剰に活性化する)ということ。

つまり、このビタミンB1、B2、B3が慢性アルコール中毒によって欠乏してくる。リーキーガットももちろんあり、アルコールによって小腸粘膜がダメージを受けるのでビタミンの吸収が悪くなる。

そして、ビタミンB1、B2、B3が無くなると、ピルビン酸脱水素酵素が動かなくなる。それにより、どんどん乳酸が溜まってくる。

これで、解糖系でたった6つしかエネルギーができない。

ということは、最も私たちの臓器の中でエネルギーを必要とする「脳」が一番最初のやられる。

なので、脳がやられていくと意識混濁や歩行障害、眼球運動障害が出てくる。これが、慢性アルコール中毒による『ウェルニッケ脳症』と言われる病態。これはピルビン酸脱水素酵素が働かなくなった、という病態。

45:50

これも、こういう病態自身を覚えるのではなく、解糖系の仕組みを覚えてると病態を把握することが可能になる。

46:06

ピルビン酸脱水素酵素が止まるのはビタミンB1の欠乏でももちろんなる。

また、ビタミンB1はその他にTCA回路で使われるαケトグルタル酸素酵素にも作用してる。

46:23

こういったところに作用してるので、ビタミンB1、B2、B3が欠乏してしまうと大量のエネルギーを必要とする脳がまずダメージを受ける(=ウェルニッケ脳症)。

また、次に心臓がやられると、日露戦争でたくさんの死者を出した『脚気』という病態になる(=心不全)。

日露戦争では戦闘でよりも実際は脚気で死んだ人が多いと言われた日本人の大虐殺があった。あれは、実はビタミンB1欠乏であったということが現在明らかになってる。

47:18(ヒ素中毒)

ヒ素:あらゆるところで糖のエネルギー代謝をブロックする物質

ヒ素はビタミンB1欠乏症と同じ症状を出す。

なので、脚気やウェルニッケ脳症と同じような症状も出すし、その他に吐き気・嘔吐・頭痛というあらゆるものを引き起こす。

47:50

今回は『解糖系』という糖が分解されていく最初のステップのところについてでした。

これだけでも、かなりの慢性病の病態を掴むことが可能になる。

さらに、次は酸素がある場合にミトコンドリアに入っていく。そして、ミトコンドリアで最終的にどのようにしてATPやCO2ができるのか、というところに入っていきます。

fin

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