生化学4フルクトースの代謝
生化学④フルクトースのエネルギー代謝
●自然の糖質は「グルコース+フルクトース」のコンビネーション
●誰も知らなかったフルクトースの代謝(フルクトリシス)
●ハチミツが二日酔いに効く理由
●フルクトースは中性脂肪を増やす?
●生命体はピンチになるとフルクトースに頼る!
●ハダカデバネズミはなぜ無酸素や低酸素でも耐えられるのか?
●グルコース(ブドウ糖)は、フルクトース(果糖)に変換される
●フルクトースが代謝されて乳酸になる理由!
●逆コリ回路
●筋肉の収縮のためには何が必要?
●ハチミツが運動・筋トレには最適な理由
●なぜ糖尿病は「ハチミツ」で治るのか?・・・・・etc
今回はフルクトースを中心に。
0:21
フルクトースについては教科書や様々な研究論文があるが、しっかりした総合的なフルクトースの作用や効果、代謝という部分がまだ十分整理されてない状態。
いつも講義で話してる『砂糖悪玉説』というもの。これが最近は『果糖悪玉説』になってる。
実は、これがとんでもない間違いである、ということをこれから話します。
今までやってきたグルコースの代謝(解糖系、TCA回路、電子伝達系)と同じ経路を使ってフルクトースも代謝されていくという話をじっくりと。
1:26
自然の糖質というのはフルーツであろうが、ショ糖であろうが、ハチミツであろうが、これはフルクトースとグルコースのコンビネーションであるということをしっかり覚えておくこと。
*フルクトース=果糖
*グルコース=ブドウ糖
1:45〈映像確認〉
左がフルクトース、右がグルコース。これが結合した形が自然の糖質であるということ。
1:55
この中でもハチミツは、グルコースとフルクトースの結合がすでに離れて単糖類として存在してる。
2:07(糖のエネルギー効率の実験)
100gのフルクトース、グルコースそれぞれを単独摂取した場合と、グルコース・フルクトースを1:1の割合(50g:50g)でコンビネーションした場合のエネルギー効率を調べた臨床実験がある。
フルクトースとグルコースのそれぞれの単独摂取では、フルクトースが43.8%、グルコースが48.1%のエネルギー効率だったという論文が出てる。
これは、論文によってフルクトースの方がエネルギー効率が高いというデータも出てるが、いずれにしても50%以下のエネルギー効率であるということ。
3:04
エネルギー効率では、投与された糖の量の内何%がエネルギーに変わったか・・・つまり、酸化されて徹底的に電子伝達系まで行って、ATPとCO2に変わったか、という指標になる。
3:23
そして、これをフルクトース・グルコースのコンビネーションだとどうなるか?
コンビネーションだと、エネルギー効率が73.6%まで上がる。
このように、フルクトースとグルコースの単独で摂るよりも、自然の糖質に含まれてるような形(=コンビネーション)で摂る方がエネルギー効率もはるかに高いということがわかる。
3:57(グルコース単独投与の場合)
グルコース単独投与では私たちの利用率(消化・吸収・代謝で徹底的に利用できる割合)はやはり限界がある。
だいたい経口摂取。口から入れて1分に1gが限界。それ以上になると消化・吸収・代謝ができなくなる。
つまり、1分に1g以上入れてしまうと、あとはバクテリアの餌になってシーボと言われる小腸腸内細菌異常増殖症を引き起こすということになる。
4:46
そして、限界値である1分に1gという最大量を与えた場合。
この場合でも中等度の身体活動に必要とされる全体の糖質のエネルギー代謝の44%、つまり半分以下しか賄えないということになる。
5:07(グルコース・フルクトースコンビネーションの場合)
それが、そこにフルクトースを入れるとどうなるのか?
最大利用率が1〜7g。最大で7倍UPする。
糖のエネルギー代謝率も50%切ってたものが、70%までUPする。
なので、やはりコンビネーションで摂取するということ。自然の糖質はコンビネーションになってるので、自然の糖質を摂るということがやはり優れてるということになる。
5:41
フルクトースは細胞のグルコースの取り込みを促進させて、血糖を下げる作用が非常に強いということ。
グルコースのエネルギー代謝で重要な関門がある。それは解糖系からTCA回路に入る関門。その関門の重要な酵素とは「ピルビン酸脱水素酵素(PDH)でした。
この酵素に限らず、グルコースをどんどん解糖系、TCA回路で代謝していく複数の酵素をフルクトースは活性化する力がある。
従って、グルコースをどんどん取り込んで細胞の中でどんどん代謝していく。そういう作用がフルクトースにあるということ。
6:39
一方のグルコース。
フルクトースの小腸からの吸収をUPさせる。これは非常に大事。
何故かというと、フルクトースも単独で摂るとよくお腹が張ったり下痢をしたりする。
これは乳糖不耐症という、アジア人に多いラクターゼ(乳糖を分解する酵素)が少ない場合も、大量に牛乳を飲むと同じ症状が出る。
そうすると、お腹が痛くなる、胃腸障害が出る。
だけど、グルコースとコンビネーションにすることにより、フルクトースが速やかに小腸から吸収されることで、フルクトースまたはラクトースを餌とするようなシーボの症状が消える。
7:38(エネルギー需要の高い臓器→フルクトースを備蓄してる)
興味深いことに、エネルギー需要の高い臓器はフルクトースを備蓄してる。
例えば、胎児の羊水。これは典型的なもの。
羊水の主要な糖質はフルクトースである。
また、脳も。脳の脊髄液、あるいは脳の神経細胞そのものがフルクトースを備蓄してる。
8:03
昔(今もかも)の一般健康常識と言われるもので、「ケトン体が脳のエネルギーとして使われる。」というもの。現象を捉えて、「糖質制限、ケトン食が身体に良いんだ。脳も守るんだ。」という話があったが、あれはとんでもない間違いである。
ケトンというのは、脳の代謝にとってはすごくストレスになる物質。
ケトン体少しであれば、脳の神経細胞を落ち着かさせる作用もあるけど、ケトン体そのものがエネルギーの材料になるということは脳にとってはすごくストレス。
なので、実は脳もフルクトースを備蓄してる。
そして、精子などの性腺、肝臓や膵臓でもフルクトースの備蓄をしてる。
9:12(フルクトースの効用)
『フルクトースの効用』
炎症性物質の「レプチン」というものがある。
レプチン:主に脂肪組織から出される炎症性物質。
グルコースと比較して結石や血液中の遊離脂肪酸、インシュリン濃度を下げる効果がフルクトースの方が強い。
また、糖尿病、ガン、慢性炎症といったような糖代謝ができない場合、血糖値を下げて脂肪酸の酸化を抑える。
つまり、糖尿病やガン、慢性炎症の人にいくらグルコースを入れても血糖値が上がるだけ。
ところが、ここにフルクトースを入れる、またはフルクトース単独の点滴などをしてあげると血糖値が速やかに下がる。また、身体を分解して出てくる脂肪の酸化、あるいはタンパク質の分解を防ぐ。
実際に糖尿病の人の血中フルクトースが健常者よりも少ないことがわかってる。
10:30
その他、ピルビン酸脱水素酵素(PDH)という解糖系からTCA回路に入る関門を活性化する。
これによって、糖の完全燃焼と私が呼んでる・・・解糖系→TCA回路→電子伝達系まで行く一連の経路全てコンプリートすることによって糖は完全に燃焼されて最終的にATPとCO2、水になる。
11:12
また、これも非常に重要だが、「リンを下げる」。リンは上がると非常に厄介。
それは、リンを下げるために出てくるホルモンがある。特にパラサイロイドホルモン(PTH)と呼ばれる副甲状腺ホルモン(甲状腺の横に副甲状腺がある)。
これは、リンが上がると出てくるストレスホルモンである。
これが出てくるとリポリシスが起こったり、血糖値が上がってインシュリン抵抗性が上がったりする。
なので、リン値を低下させるのが非常に重要。特に、穀物、肉類、魚を過剰摂取するとリン値は上がってくる。
なので、必ずフルクトースを含むハチミツやフルーツと一緒に摂取するのが非常に大事。
12:24
グルコース、フルクトース、ガラクトースの単糖類は解糖系、TCA回路に入っていくという話をしました。
そして、ピルビン酸からアセチルCoAになる最大の関門(解糖系からTCA回路、ミトコンドリアに入っていく関門)のピルビン酸脱水素酵素を活性化するのが実はフルクトースであるということ。
12:56
もし、このピルビン酸脱水素酵素が機能しなくなれば、ピルビン酸は乳酸にならざるを得ないという話もしました。
これが人間の発酵。解糖系の最終の形態だということを『糖のエネルギー代謝』解糖系のところで話したこと。
13:24
フルクトースとグルコース比が高いものというのは、特にハチミツ。
そして、アーガイブシロップ(アガベ?13:32)。こういったものでもグルコースとフルクトース比が高いものもある。
13:38
自然の糖質といったものに、グルコースとフルクトース比が高い、1:1より少しフルクトースの方がが多いというものがある。
これは、ショ糖。グルコースとフルクトースが1:1のものよりも、血糖の低下作用が強いこともわかってる。
14:05〈映像orテキスト確認〉
絶食にすると、フルクトースはどのような作用を持つか、という臨床実験がある。
ファスティングというのがあるが、ファスティングの状態でも果糖(フルーツやハチミツ)を摂った方が良いというのが次の臨床実験。
・脂肪、タンパク質の分解を防ぐ作用がある。
・血糖、インシュリン値をキープ。
・ミネラルの喪失を防ぐ。
・甲状腺ホルモンの低下を防ぐ。
14:44〈映像orテキスト確認〉
いくらファスティングをしてても、フルクトースを入れることで①〜④のファスティングによる悪影響をストップすることができる。
・ファスティング(糖質制限でも同じ)をすると、必ず脂肪・タンパク質がまず分解されて糖新生で糖を作って血糖値を上げようとする。
・そして、血糖がどんどん高くなる。脂肪はエネルギー代謝として使われ始めると、もちろんインシュリン値が徐々に落ちていく(インシュリン抵抗性が上がっていく)。
15:30
何故、インシュリン値が下がってくるのか?
これは、身体に溜まってる脂肪であるプーファが血中に出ると、ダイレクトに膵臓のインシュリンを分泌するデータ細胞というところがダメージを受けて徐々にインシュリンが出なくなってくる。
15:54
・そして、フルクトースはミネラルの喪失を防ぐ。
ミネラルというのは、酸と電気のバランス、PHを調整する働きをしてる。
そして、脂肪・タンパク質が分解されたり、糖がなくなってくると私たちの身体は酸血症となり乳酸が溜まってきたりする。
その酸を中和するためにミネラルが使われたりするが、それを防ぐことができる。
16:29
・また、プーファが血液中からリポリシスで出た場合、甲状腺をダイレクトにブロックする。
この脂肪のリポリシスを防ぐという作用がフルクトースにはある。なので、甲状腺を守る。
16:52
ファスティングをしてる時も、あるいは糖質制限をしてる時もしっかりフルーツやハチミツ、ショ糖を摂ればファスティングや糖質制限の悪影響を防ぐことができる。
だけど、糖質制限の場合は糖質そのものを制限をしないといけないというようなやり方なので、もちろんハチミツやショ糖を禁止する。なので、糖質制限はこれに当てはまらない。
つまり、糖質制限では、
・脂肪やタンパク質の分解
・血糖値が上がる
・ミネラルが喪失する
・甲状腺ホルモンが低下する
というこれら4つの悪影響は免れないということになる。
17:54(フルクトースの効用)
フルクトースの効用で昔から知られてることは、血管からのリークを防ぐという作用。
血管からのリークとは:血管から血液が漏れていく様
血管というのは血液が漏れないように、しっかりとしたバイヤー?ワイヤー?(18:15)がある。
ところが、プーファ過剰、エストロゲン、一酸化窒素(NO)が出てくると、血管の壁に穴ができて、そこから血液が漏れていく。
そして、血液が染み出していくと組織の間に炎症が起こったりむくみが出たりする。
18:47
糖尿病の臓器障害の原因は、血管からのリークと言われてる。
糖尿病性網膜症という病態があり、失明の原因になるもの。これも、網膜の血管からリークをして血液が網膜に漏れていくという病態。
こういったものも、フルクトースを投与することで防ぐことができる。
なので、糖尿病の発症を抑えるのは当然のことながら、糖尿病の合併症を抑える作用もフルクトースは持ってる。
19:30
そして、脳はフルクトースを備蓄してる。
脳は身体全体の60%という過半数の糖を消費してる(安静時)。それが脳。
なので、脳は少しでも低血糖になるとすごく敏感になる所。
まず、低血糖になると症状が出てくるのは脳。意識障害、意識混濁、痙攣などが起きてくる。
20:02
昔から一般健康常識で脳は低血糖時にケトン?(20:07)を利用するから、ケトン体を作るようなストレス下・・・実はケトン体を作ること自体がストレス下にある時である。
こういった「ケトーシス、ケトアシドーシスというケトン体がどんどん産生される状態が脳にとって好ましい」というのは全くサイエンスを勉強してない人たちの戯言にすぎない。
20:42
脳は、低血糖時にもしグルコースがなければ、備蓄したフルクトースを利用する。あるいは、グルコースをわざわざフルクトースに変えて使って、フルクトースを最大利用してる。
21:04(ハダカネバネズミ)
ハダカデバネズミ:一般の動物と違い、主に地下に住んでる。それも群をなして住んでる動物。
このハダカネバネズミは低酸素ストレスに非常に強い特徴がある。18分の酸欠でも全くダメージなし。
もし、地上のネズミが18分も酸欠になると、ほとんどの臓器(特に脳)はやられてしまう。つまり、脳死の状態になる。
それは人間も全く一緒。
21:46
では、何故ハダカネバネズミが低酸素ストレスに強いのか?
それは、肝臓・腎臓・血液といったところのフルクトース、スクロースの濃度がUPする。
そして、このフルクトース、スクロースをエネルギー源として使うことで、低酸素ストレスに対処してる。
22:18
生命体はピンチになるとフルクトースを生産してエネルギーとして使用する。
これも、今までの教科書や論文では触れられなかった真実である。
22:37(ポリオール回路)
ポリオール回路というものがある。これはストレスに晒されるとグルコースからフルクトースへ変換される回路が身体に備わってる、ということ。
低酸素、低血糖などのストレスという場合にはグルコースからソルビトール、そしてそこからフルクトースに変わる。
このフルクトースが果糖分解して最終的にエネルギー代謝、ATPができる。
このように低酸素などのストレスではグルコースはフルクトースに変換されてATPの生産をする。この回路をポリオール回路という。
23:29
グルコースそのものを代謝してATPを作るよりもフルクトースを代謝した方がはるかに効率は高い。これは“ストレス下では”、ということ。
通常のストレスがない時には、グルコースから普通に解糖系→TCA回路→電子伝達系まで行くと36ATPとたくさんのCO2ができる。
しかし、ストレス下になると解糖系からTCA回路に入ることができない。そういう状況ではフルクトースを使った方がエネルギー効率は高い。そのことについてを伝えていきます。
24:16〈映像orテキスト確認〉
人の脳内の神経細胞の中でのグルコース。
これも継続的にグルコースを注射した場合の脳神経細胞内の濃度の変化を緑色のグラフで示してる。
この場合、グルコースしか注射してないにも関わらず、下の青(フルクトースを示してる)のフルクトースも同時に、グルコースの濃度が脳内で上がるとフルクトースもそれに比例して上がっていく。
そのことが2017年に臨床実験ではっきりしてる。
25:01
フルクトースは一般的に血液中にはあまり高い濃度では存在してない。
なので、グルコースが注射されてフルクトースの濃度が上がってるというのは明らかにグルコースの一部がフルクトースに変換されてるということを示してる。大体、注射したグルコースの30〜35%はフルクトースに変換されてる。
これも、人間の神経細胞(脳)の中でこういうことが起こってるということが証明されてる。
25:45
『生命体は何故、ピンチになるとグルコースよりフルクトースを使用するのか?』
フルクトースは、グルコース分解を制限する酵素をバイパスできるという特徴がある。
26:05〈映像確認〉
グルコースとフルクトースを並べて実際に解糖系までの図を示したものがある。
【グルコース】
グルコース→グルコース6リン酸→フルクトース6リン酸→フルクトース1,6ビスリン酸→グリセルアルデハイド3リン酸→ピルビン酸
ピルビン酸まで行って、ストレスがあるとこの後TCA回路に入らず乳酸になる。これがストレス時のグルコースの代謝経路(解糖系)。
26:50
解糖系:プーファがあった場合
グルコースが細胞に入るところのグルコースの運搬隊(グルート1)があるが、この運搬隊がまずプーファでやられる。
なので、グルコースそのものが細胞内に入れなくなるという事態が引き起こされる。
そして、ホスホフルクトカイネース(PFK)がフルクトース6リン酸から下のフルクトース1,6ビスリン酸を媒介する酵素だけど、この酵素は実はATP、クエン酸、水素、酸度が高まった場合にブロックがかかる。
ということは、フルクトース6リン酸からその下に行けない。つまり、ATP生産ができなくなるという事態がここで引き起こされる。
このように、実はグルコースは多数のところでブロックを受ける可能性がある。
28:08〈映像orテキスト確認〉
左側のフルクトース。
それに対して、フルクトースの場合。
【フルクトース】
フルクトースからフルクトース1リン酸になり、最終的にピルビン酸に行く。
実はフルクトースはホスホフルクトカイネースなどの酵素が必要でないために、グルコース分解を制限する酵素をバイパスすることができる。
簡単にいうと、フルクトースはフリーでどんどんエネルギーに変わっていくことができるということである。
28:43
フルクトースはホスホフルクトカイネースを活性化させる作用も持ってるので、もしグルコースの代謝がブロックされた時でもフルクトースはグルコースの代謝をまた再開することもできる。
このように、フルクトースの方がピンチになる程有利になってくる。このことを覚えておくこと。
29:14
フルクトースが分解されていき、グルコースと同じようにエネルギーになる過程を『果糖分解(フルクトリシス)』という。
グルコースの方は『解糖系(グライコリシス)』。
【果糖分解】
まず、フルクトースが細胞内に入り、フルクトース1リン酸→グリセルアルデハイド3リン酸→ダイハイドロキシアセトンリン酸(ここまではトライオース3リン酸という)→ピルビン酸
ここまではグルコースの分解とほぼ同じ。
30:06
酸素がある場合はフルクトースも同じようにTCA回路に入って、グルコースと同じく電子伝達系まで電子を酸素に受け渡して、ATPとCO2ができる。ここも同じ。
30:23
ところがピンチの時(低酸素、プーファ過剰)にストレスがかかると、このピルビン酸からTCA回路のところがブロックされる。そうするとピルビン酸は乳酸にならざるを得ないというのが「解糖系」。
↑がグルコース。
ところが、フルクトースはその手前で解糖系をバイパスして、乳酸にならずにトライオース3リン酸のところから、セリン、グリシンというところで「ワンカーボン回路」に入ることができる(ワンカーボン回路というのは少し複雑)。
このワンカーボン回路に入って、ATPを作ることができる。
31:09
ちなみに、グルコースはピルビン酸から解糖系、そして乳酸になる。そこで6ATPを作る。
31:26〈映像確認〉
ワンカーボン回路は少し複雑なので、詳しくはいずれ。
フルクトースがワンカーボン回路に入り、CO2とエネルギーを作るということ。
31:46〈映像確認〉
『ピンチになるとフルクトースが有利』
ストレス下、解糖系のルートでは2モルのATPしかできなくなる。
ところが、ワンカーボン回路ではこの倍の4モルのATPが産生される。つまり、倍のATP産生ができるということ。
32:10
この、2モルのATPというのは解糖系。
グルコースとフルクトースの共通のルートのところでは2モルしかできない。手前までにはもう少しATPができたり消費されたりするが、共通ルートでは2モルのATPしかできない。
ワンカーボン回路に入ると、その倍の4モルのATPができる。つまり、倍のATPができるので、やはりフルクトースを使った方が有利であるということ。ワンカーボンに入り、倍のATPを作るので。
32:52
フルクトースの効用はたくさんあるが、もう一つ「グリコーゲン」。
グリコーゲンというのは肝臓・腎臓・筋肉など、その他あらゆる組織で備蓄ができる。
ここからは、このグリコーゲンを作ることの重要性というものに迫っていきます。
33:21(グリコーゲンの重要性)
【グリコーゲン】
グリコーゲンが何故重要か?
夜間、ストレス時の糖供給はグリコーゲンに頼ってるというのが私たちの実際の姿。
脳、赤血球、性腺組織といったところが糖に頼らざるを得ない。
そして、夜間はもちろん食事をしてないので、就寝時はどうしても低血糖になってくる。この時に、糖を供給するのが「グリコーゲン」。
これは、ストレス時もそう。
ストレス時は通常よりもたくさんの糖(エネルギー)を必要とする。
従って、血糖が下がりがちになる。こういった時にもグリコーゲンが、貯蔵してあるブドウ糖を分解して利用する。
34:17(筋肉)
筋肉に関しては、筋肉の収縮を決定するのが実はグリコーゲンの量。
筋肉はグリコーゲンを備蓄してるけど、筋肉が備蓄してるグリコーゲン量がある一定量低下してしまうと筋肉の収縮がストップする。
これが「筋トレで同じところを連日鍛えてはいけない」といつも言ってること。
グリコーゲン量が戻るのには時間がかかる。なので、同じところを鍛えるとグリコーゲンがどんどん低下していって、やがて筋肉が収縮しなくなる。
だから、無理やり筋トレやランニングをすると筋肉が裂傷するのは当たり前である。
35:18〈映像orテキスト確認〉
フルクトース・グルコースのコンビネーションとグルコースだけの実験がある。
運動後の肝臓のグリコーゲン量を縦軸、回復時間が横軸。
そして、青のバーがグルコースだけを補充した場合。
赤がフルクトースとグルコースを運動後に補充した場合。
この実験の目的は、どちらが減少したグリコーゲン量を早く補充できるか、ということ。
35:57
《グルコースだけ与えた場合》
元の肝臓のグリコーゲンのストックが戻るのに25時間かかる。
《フルクトース・グルコースのコンビネーションを与えた場合》
こちらは、グルコースだけ与えた場合より半分以下の時間、11
時間でグリコーゲンが満タンになる。ガソリンが満タンになるということ。
36:27
なので、フルクトース・グルコースのコンビネーションはグルコースだけを補充した場合と比べて2倍以上の速さでグリコーゲンを補充するということがわかった。これが、脳・赤血球・性腺組織などの糖が必要な組織にとっては非常に有利になる。
36:54
フルクトースは何故、このようにグリコーゲンをたくさん作る力があるのか?
それは、グルコースからグリコーゲンを形成する酵素を促進(活性化)するから。
その酵素をグリコーゲン合成酵素というが、それを活性化する力がフルクトースにはある。
37:21〈映像確認〉
フルクトース・グルコースからグリコーゲンが作られるのを示した図がある。
グルコースからずっと代謝されていって、ピルビン酸まで行く (解糖系)。そして、ピルビン酸脱水素酵素が働いて、ミトコンドリアのTCA回路に入るのが下に行く図。
そして、その逆方向に行くのもある(下から上へ)。フルクトース6リン酸→グルコース6リン酸→グルコース→肝臓、筋肉でグリコーゲンになる。これが逆の回路(糖新生の回路)。
それから、グリコーゲン合成の回路が解糖系と逆方向の矢印になる。
38:20(プーファ)
興味深いのがプーファ。
オメガ6、オメガ3と言われる毒性物質は、先述のようにピルビン酸がアセチルCoAに変換される最大の関門であるピルビン酸脱水素酵素をまずブロックする。
つまり、解糖系からTCA回路に入るところをブロックするということ。
さらに、グルコース6リン酸→グルコースに変わるところもグルコース6ホスファテースという酵素が働いて糖新生をする、あるいは糖新生からグリコーゲンを作るわけだけど、プーファはこの部分もブロックする。
なので、糖新生で上に行く矢印もブロックするし、下に行く矢印もブロックするのがプーファ。
つまり、糖の利用を徹底的にストップしてしまう。エネルギーとしても利用させなくするし、グルコースとして糖新生もブロックするし、グリコーゲンも作れなくする。これがプーファの怖いところである。
39:36
そして、フルクトースというのは、ピルビン酸脱水素酵素を活性化することで、プーファの害悪を少しでも和らげることが可能になる。
39:51
グリコーゲン蓄積症という遺伝病と言われてるものがある。
でも、実際にはこれは遺伝ではない。
糖原病(Glycogenosis, Glycogen storage disease)というのがあるが、これは医師の国家試験で出てくるような珍しい病気。
これは、グリコーゲンが利用できない、あるいはグリコーゲンがしっかり溜められないという病態。
グリコーゲンがないと:低血糖に対応できない。肝機能障害も起こる。乳酸アシドーシスを来す(糖がグリコーゲンからしっかり供給されない)。
40:42
この病態の原因としては解糖系やグリコーゲンを作るところと分解するところの糖の代謝がブロックされてるというもの。これが直接の原因。
こういった場合に解糖系からTCA回路に入らないという病態も兼ね合わせてるということ。
つまり、
・乳酸が溜まっていく
・低血糖が反復するので赤血球や脳がやられていく
・発達遅滞
・てんかん
・成長障害
・やがて、筋肉や心筋もやられていく
心筋も活動時はやはり糖が必要。それで低血糖をきたすと、筋肉・心筋もやられていく。
41:31
そして、この病気にもフルクトースを投与することでこの症状が全部改善する。
というのは、フルクトースはグリコーゲンの蓄積、合成、利用ができる。グリコーゲンからグルコースになり、そこから解糖系→TCA回路での複数の酵素を活性化できるので、糖の利用を進められる。
単に遺伝病と言われてた糖原病もフルクトースを投与するだけで、十分改善するということが報告されてる。
42:16
【フルクトース→乳酸の話】
フルクトースの一部は乳酸に変換される。
何故、変換されるのか(ここは少し難しい話)。
42:42
乳酸は、病気の場を作るキープレイヤー。特に、ガンの発生や転移には必要な物質。
フルクトースは強力な抗ガン作用を持ってるということは、ハチミツの効果を見てもわかるように、多数のエビデンスがある。
だけど、この乳酸を作るということが、もしフルクトースからの変換がたくさんあればこれは逆にガンを増殖させるはず。
では、何故そのようなことをするのか?ということに迫ります。
43:32(乳酸についての整理)
・乳酸は病気の場を作る物質。
・PDH(ピルビン酸脱水素酵素)と呼ばれる関門をブロックすることで糖のエネルギー代謝をブロックする。
・そして、CO2を下げるということで、全ての細胞の営みを止めてしまう。その一つが細胞内をアルカリ性にしてしまうということ。つまり還元状態にするため。これを「還元ストレス」という。
細胞内はCO2ができることで、弱酸性にキープされてる。
・そして、乳酸はダイレクトに脳の神経毒となる。
神経細胞を過剰に興奮させることでアスパルテームなどの人工甘味料と全く同じ作用をする。グルタミン酸(味の素)も。こういったものと同じ神経毒の作用をする。
なので、過剰に神経細胞が興奮させられると、これはやがてエネルギー不足となり、てんかんや痙攣を起こす。
・そして、ガンの転移を促す。
44:57
【コリ回路】
この乳酸というのは毒性物質なので、筋肉や赤血球で発生した乳酸は肝臓でデトックスされていく。この回路を「コリ回路」という。
コリ回路:グルコースにエネルギーや重要なNAD+を消費してまでグルコースにデトックスしていくという回路。
45:30
【逆コリ回路】
最近、「逆コリ回路」というものが存在することが証明された。
「逆コリ回路」とは?
筋肉や他の組織で発生した毒性物質である乳酸を肝臓でデトックスするというのがコリ回路だけど、それの逆なので、「肝臓で発生した毒性物質である乳酸を筋肉でデトックスする」というもの。こういう仕組みがあるということがわかった。
これを逆コリ回路という。
46:09
ハチミツを摂取した場合。
これはすでにグルコースとフルクトースに分離してるので、グルコースは小腸から吸収されてもちろん脳を中心とした組織にダイレクトに運ばれてエネルギーの原料となる。
フルクトースは、これも同じようにグルコースに変換されたり、ストレスがある場合(低酸素など)はフルクトースそのものがエネルギーになったりする(ストレス下ではワンカーボン回路に入って、グルコースの倍のATPを作る)。
そして、小腸でグルコースと同じように吸収され、フルクトースは小腸でほとんどが代謝される。が、小腸の代謝能力を超えたフルクトースは最終的に肝臓で代謝される。
47:20
フルクトースが「肝臓で主に代謝される」といのは全くのデタラメで、ほとんどは小腸で全て代謝されていく。
ここから少しこぼれ落ちた (スピンオーバーした)フルクトースは肝臓に運ばれて代謝されるということ。
47:39
肝臓でも、フルクトースの一部はグルコースに変えられて、筋肉や赤血球、脳といった組織に使われるけど、一部が乳酸となる。
そして、この肝臓で発生した乳酸が筋肉に取り込まれる。
筋肉でピルビン酸に変わり、一部はエネルギーとして使われるし、一部は筋肉のグリコーゲンとして蓄積される。
特に筋肉が動いてない時には乳酸から最終的にグリコーゲンが作られる。
運動してる時には乳酸がダイレクトにエネルギーとして使われるという機構が筋肉に存在してる。
これが逆コリ回路というもの。
48:40
『筋肉は安静時にしっかりとグリコーゲンを備蓄しなければならない』というのは?
これは、筋肉の収縮を決定してるのは、グリコーゲンの量だから。
運動時の筋肉がスムーズに働くためには、フルクトースが肝臓で乳酸に変換された後にこれを筋肉でデトックスする。逆コリ回路で筋肉のグリコーゲンになる。
一方、運動時には肝臓から発生した乳酸は筋肉のダイレクトなエネルギーになる。
49:20
何故、こんな毒性物質をわざわざ肝臓が排出してるのか?
もし、フルクトースの全てをグルコースに変換した場合は、もちろん糖依存組織である脳・赤血球・性腺組織に全てエネルギーの源(燃料)として使われる。
そうすると、筋肉はこれを使うことができない。つまり、筋肉のエネルギー源がなくなる。
筋肉もさすがに運動してる時は糖が必要。でも、グルコースは優先的に糖しか使えない組織に持っていかれる。
ということで、自分のエネルギー源を確保するために、脳・赤血球・性腺組織で使えないようなエネルギー燃料を使う。
つまり、これが乳酸だということ。
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なので、乳酸、グルコースがほとんどだけど、一部は乳酸にフルクトースから変わることで、乳酸を独占的に筋肉が使うことができるというシステムを築き上げた。
これが、フルクトースが一部乳酸に変わるという意義。
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ちなみに、このフルクトースからできる乳酸はごく微量。
ごく微量とは?
それは、血液中にはほとんど影響を与えない程度の乳酸の発生量だということ。筋肉でほとんど使ってしまうということもあるが。
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だけど、問題はやはりガンや糖尿病などの時にできる糖のエネルギー代謝のブロックによって解糖系で発酵が起こって、たくさん乳酸ができる場合。
こういった場合は血液中の乳酸量はどんどん上がるし、マラソンあるいはトライアスロンなどの長期間の過剰な運動ストレスによっても大量の乳酸が血液中に発生する。
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そして、もう一つ重要なのはプロバイオ。
それによって乳酸菌が増殖するので、たくさんの乳酸が発生する。この場合の血液中の乳酸量はすごく高くなる。
こういった場合の乳酸増量と、フルクトースから変換される乳酸量は比較にならないほどフルクトースから変換される乳酸量は少ない。
変換された後でもすぐに筋肉で使われるので、実質上フルクトースから乳酸の変換によって乳酸が血液中で増えるということは「ない」ということ。
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一方のガン、糖尿病、運動時(過剰な運動)、腸内細菌異常増殖という乳酸菌の増殖による乳酸産生は著しく乳酸の血液濃度を上げて、病気の場を作っていくことになる。
ここがフルクトースからの変換の方とは大きく違うこと。
52:56〈映像確認〉
フルクトースは糖のエネルギー代謝を高める。
これは、フルクトース濃度が上がることにより、それに比例してCO2産生量が上がってくる(左の図)。
CO2産生量が上がるということは、TCA回路がどんどん回ってるという証拠である。
右の図は、縦軸がピルビン酸脱水素酵素、左がフルクトースの濃度。これはフルクトースの濃度が高まる程、ピルビン酸脱水素酵素が活性化されていくというのを示した図である。
つまり、フルクトースがあると、ピルビン酸脱水素酵素が活性化されることで解糖系→TCA回路→電子伝達系とスムーズに糖のエネルギー代謝が進むということ。
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実際に、ピルビン酸脱水素酵素が何故重要なのか?
それは、プーファ(特にオメガ3)、一酸化窒素(NO)、ヒ素、乳酸、エストロゲン・コルチゾール・セロトニンなどのストレスホルモン、またアセチルCoAやクエン酸は脂肪がもしエネルギーに含まれた場合にたくさんできる物質だが、これらはピルビン酸脱水素酵素をブロックする。
そして、このピルビン酸脱水素酵素のブロックを解除するのがフルクトース。
フルクトースを入れることでプーファ、一酸化窒素、エストロゲンといった物質によってブロックされるピルビン酸脱水素酵素を解除する作用がある。
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もし、ピルビン酸脱水素酵素がプーファなどでブロックされると、もちろんピルビン酸はTCA回路に入ることができないので、乳酸がどんどん溜まっていくということになる。つまり、乳酸血症になる。
55:10〈映像確認〉
肝臓内でのグルコース、フルクトースの代謝の全体図。
赤丸で囲んでるグリコーゲン合成酵素、ホスホフルクトカイネース、ピルビン酸脱水素酵素というところをフルクトースが活性化することでグルコースの代謝がどんどん進んでいく。
そして、最終的にATP、CO2ができる。
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フルクトースの代謝の全体図を見ると気づくと思うが、これはグルコースとのコンビネーションで糖のエネルギー代謝を高める物質であるということ。
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そして、自然の糖質。
グルコースとフルクトースが両方含まれてるというのが自然の糖質の特徴。
フルーツ、ハチミツ、ショ糖といったものはその他にミネラルやビタミンが含まれてる。
このTCA回路、解糖系、電子伝達系ではミネラルとビタミンが大変重要な要素になる。
例えばNAD+が糖から引き抜いた電子を最終的に電子伝達系に運ぶということだったが、このNAD+もビタミンB3だし、他にも電子運搬隊のFADもビタミンB2である。
あるいは、マグネシウムというミネラルも様々な糖を代謝する酵素にとって必要なミネラルである。このようなミネラルが自然に含まれてる。
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なので、グルコースとフルクトース+ミネラルとビタミンが1セットになって、すでに糖のエネルギー代謝を進める力があるということ。
このような食物全体の効果を「アントラージュ効果」という。
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例えばハチミツからフルクトースだけ、あるいはグルコースだけ、またはミネラルだけを取り出すのではなく、これはセットで完成されてるということを頭の中に入れておくこと。
つまり、この自然の糖質を摂るということ=私たちの糖のエネルギー代謝を高めるということ。
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今回は、フルクトースを中心にその代謝と、グルコースとのコンビネーションが素晴らしいということの話でした。
最終的にはグルコースとフルクトースの2つがコンビネーションすることで、実際の私たちの糖のエネルギー代謝は万全につつがなく進んでるということを頭に入れておくこと。
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今までの教科書では、ブドウ糖の代謝しかフォーカスされてなかった。解糖系、TCA回路、電子伝達系は教科書には書いてるけど、あくまでもこれはグルコースの代謝しか書いていない。
でも、実際に自然の食べ物の中にはフルクトースというものが含まれてる。
そのフルクトースがグルコースとのコンビネーションで糖のエネルギー代謝を高める力を持ってる。
あるいは、このフルクトースはピンチになった時に実際に私たちの生命を救ってくれるという力がある。
これらも頭に入れておいてほしいこと。
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今回の勉強で自然の糖質が一番優れてるということ、三大栄養素の中心になってるということを理解してもらえれば。
