生化学7脂質の生理作用
生化学7
エネルギー代謝と脂質
脂質の生理作用
●概要
・脂肪の消化・吸収―脂肪便が生じる仕組み
・組織での食事中の脂肪(カイロマイクロン)利用
・脂肪の蓄積
・異所性脂肪(プーファ)蓄積―脂肪肝(NAFLD:非アルコール性肝障害)
・病はリポリシス(脂肪分解)から
・リポリシス(脂肪分解)ホルモン
・プーファは生理的条件で容易にアルデヒドを産生する
・プーファ(多価不飽和脂肪酸)の自動酸化
・二重結合(-C=C-)の数が多い(EPA,DHA)ほど酸化されやすい
・プーファ(PUFA)からアルデヒド産生で形成されるアルデヒド結合体
・アルデヒドと結合する細胞成分
・アルデヒドはタンパク質、DNAに結合して構造・機能を変化させる
・アルデヒドは糖のエネルギ―代謝障害を反映
・アルデヒドの処理
・プーファ(オメガ3&6)の代謝経路とエイコサノイド産生
・生体内の脂質過酸化の指標:シミ、老人斑リポファッシン(Lipofuscin)
・失明(加齢黄斑変性)の原因もプーファ(DHA)の酸化
・プーファのタンパク質分解酵素ブロックが新陳代謝を止める!
・オメガ3はオメガ6の毒性を消す?
・オメガ3は細胞内で炎症を引き起こす
・遊離脂肪酸のプーファは細胞成分に組み入れられる
・ミトコンドリアのカルジオリピンがDHAになると
・老化の細胞膜ペースメーカー説(membrane pacemaker theory)
・プーファフリーの効果とは?
・プーファのデトックスに必要な期間
生化学⑦エネルギー代謝と脂質
前回の続き。エネルギー代謝と脂質の2回目。
今回は脂質の生理作用について。
0:18
【脂質の消化・吸収・代謝、生理作用】
まず、食事中の資質が私たちの口から入ってどのように消化吸収され代謝されていくのかの外観を。
0:41
食事中の脂質とタンパク質も同様に胃や膵臓、腸などの酵素を使って分解していき最終的には小腸から吸収されていく。
ただ、脂質の場合は特に胆のうから胆汁が出てくる。これが脂肪の消化にとっては非常に大事な部分。この胆汁によって、脂質の脂成分が乳化作用を受け、初めて小腸から吸収されていく。
1:26
まず、私たちの食事中の脂肪の中の中性脂肪の割合が90%くらいを占めてる。この中性脂肪は私たちの口腔内、胃、膵臓から「ライペース」という酵素が出てまず分解されていく。
*ライペース:日本語読みではリパーゼというが、正しくはライペースという発音をする。
2:03
その他、食事中の脂質で中性脂肪以外のものは例えば「コレステロールエステル」、「リン脂質」。
これらは膵臓から「エステレース」という酵素や「ホスホライペースA2」という酵素が出ることで初めて分解されていく。
2:24
最終的にはこの分解物にさらに胆汁酸が出て乳化をして初めてモノアシルグリセロール・・・
*モノアシルグリセロール:中性脂肪(トライアシルグルセロール)は遊離脂肪酸が3つ結合した形だが、モノアシルグリセロールは中性脂肪と違い、遊離脂肪酸が一つ結合したもの(あと2つは遊離脂肪酸として外れてるということ)。
・・・そして、遊離脂肪酸、コレステロール、脂溶性ビタミンという形で小腸から吸収されていく。
3:12
■脂肪便
*脂肪便:青白から黄色のオイリーな便
この脂肪便は非常に酸臭が強く、トイレを見ると水に浮いてるような状態。
これは、どういった時に脂肪がたくさん含まれるような便が出来るのか?
それは、胆石や膵炎の場合には胆汁がしっかり出ないので脂肪が分解されず便として出ていくということ。
また、炎症性腸疾患、シーボなどの腸内細菌異常増殖の場合にも脂肪がうまく吸収されないという状態がこの脂肪便を招く。
3:59(抗肥満薬・オリスタット)
その他にも、抗肥満薬として「オリスタット」という薬が使われてる。
これはわざと脂肪便を出す医薬品。これは、胃と膵臓のライペース(脂肪分解酵素)をブロックする医薬品で、わざと脂肪便を出すことで脂肪吸収をブロックする。それによって肥満を防ぐという薬である。
なので、この薬の開発を見るとわかるように、糖質で太るのではなく、脂肪の摂取で肥満になるということ。
4:37
実際に、このオリスタットという薬は抗ガン剤としても利用されてる。
何故、抗ガン剤として使用されてるのか?それは、ガンは脂肪中毒だから。ガンは脂肪を蓄えて脂肪をエネルギー源とする特殊な細胞。
なので、脂肪の吸収そのものを抑えるオリスタット薬でガンが縮小していくということになる。
ただし、このオリスタットは医薬品なので不純物もたくさん含まれてる。且つ、長期投与によって肝機能障害や、脂が吸収できない作用がある薬なので、脂溶性ビタミン(ビタミンADEK)が長期的に不足してくる。
なので、オリスタットという薬は私はあまりオススメしない。
5:37
モノアシルグリセロールや遊離脂肪酸、コレステロール、脂溶性ビタミンに分解された脂肪の内容は小腸の粘膜細胞内で、あるタンパク質と結合してカイロマイクロン(カイロミクロン)という集合体となり私たちのリンパに入ってくる。
最終的には左鎖骨下静脈にリンパが流れ込んでるので、ここから血液に入り、食事に含まれる脂肪が全身に回る。
そして、プーファなどの遊離脂肪酸もカイロマイクロンに組み入れられ、リンパを回って血液に入っていく。
6:38
これが全体の脂肪の吸収の流れ。
脂溶性ビタミン、モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸、コレステロールといったものは最終的にカイロマイクロンという形となり、この塊がリンパに流れて血液に入っていくということ。
7:06
上記の「左鎖骨下静脈に大きな静脈があり、そこに食事中のカイロマイクロンが流れ込んで血液に入る」というもの。
昔、食事ができなくなると高カロリー輸液というものが盛んに静脈から入れられることが多かったが、この高カロリーの輸液は太い静脈じゃないと炎症が起こる。
なので、特に鎖骨下静脈という太いところに注射をして、そこに持続的に高カロリーの輸液を点滴する、ということを現代医学では長らく行ってた。
8:04
そして、滅多にないが左鎖骨下静脈を注射する時に、誤ってリンパ管が静脈に流れ込むところを刺してしまうと、胸腔内(肺や心臓を包む膜の中)に食事中から入ったカイロマイクロンがたくさん含んだリンパが漏れ出してくる。
これを「乳糜胸」と呼び、脂肪がそのまま肺に漏れて呼吸困難になるという合併症を稀だけど引き起こすことがある。
8:50
■血液中のカイロマイクロン
食事中から小腸粘膜を通った脂肪がカイロマイクロンになり、最終的に左鎖骨下静脈から血液に入る。
では、血液中のカイロマイクロンは次どこに行くのか?
それは、主に筋肉、脂肪組織などでこのカイロマイクロンは分解される。
9:18
カイロマイクロン中に入ってる中性脂肪は「リポプロテインライペース」という酵素があるが、これで遊離脂肪酸とグリセロールに分解される。
遊離脂肪酸とグリセロールに分解、というのはリポリシスのこと。
そして、分解された遊離脂肪酸は筋肉と脂肪組織の細胞内でエネルギーとして使われたり、残りの遊離脂肪酸はアルブミンと結合して他の細胞に取り込まれることもある。
9:53
そして、遊離脂肪酸とグリセロールに分解したもう一つの糖アルコールであるグリセロールは肝臓で回収され、解糖系でエネルギー産生あるいは糖を作る糖新生(低血糖時に肝臓で糖を作って、脳・赤血球に供給する)の材料になる。
10:23
カイロマイクロンの残り、中性脂肪以外は?というと、コレステロールエステル、リン脂質、アポタンパク、脂溶性ビタミンなどは肝臓で取り込まれてまた使用されていく。
10:40(上記まとめ)
食事中の脂肪が小腸でカイロマイクロンになり、組織へ中性脂肪から遊離脂肪酸を供給していく。
そして、残ったグリセロールは肝臓でまた回収されて糖のエネルギー代謝、または糖新生に使われるということになる。
11:08
【脂肪の蓄積】
脂肪の蓄積に関しては場所は脂肪組織がメイン。脂肪細胞の細胞質に脂肪滴として存在する。
したがって、肥満の原因というのは明らかに脂肪の過剰摂取。特にプーファの過剰摂取である。
11:26
脂肪の蓄積の形態としては、トライアシルグリセロール(中性脂肪)の形で蓄積されてる。
肝臓では中性脂肪はほとんど蓄積しない。
コレステロール、リン脂質、アポプロテイン(アポタンパク質)とパッケージ化されて「very low density lipoprotein(VLDL)」として、末梢組織に中性脂肪、コレステロールを末梢の組織が必要とする度合いに応じて送っていくという形になる。
なので、「肝臓で中性脂肪が溜まる」というのは実は病的な状態。
12:18
この、VLDLという肝臓から末梢に供給されるパッケージの中にもプーファが組み入れられて全身を循環することになる。
だからもし過剰なプーファを摂取すると、このように色んな形で全身を循環するということになる。
12:42〈映像確認〉
脂肪組織の図。
脂肪の細胞は大半が「脂肪滴」と言われる脂肪の液体で占められてる。
そして、この脂肪滴の中心部は飽和脂肪酸、外側に行くほど不飽和脂肪酸(特にプーファ)。これが蓄積されてる。
飽和脂肪酸も不飽和脂肪酸もいずれも油。つまり、水には溶けないので、もしこれを肝臓でデトックスする場合はタンパク質(特にアルブミン)と結合して肝臓に運ばれる。
13:30
■プーファの蓄積と肝臓の病気
プーファ過剰で肝臓のエネルギー代謝や甲状腺機能が低下する。
そうなるとどうなるか?
植物油脂、フィッシュオイルというプーファが肝臓に蓄積して、いよいよ炎症を引き起こすことになる。
元々このような油は肝臓に溜まること自体がおかしい。正常では肝臓は脂肪のストックの場所ではない。肝臓は全組織に配る仲介役なのである。
その仲介役のところにこのような油が溜まることで、いわゆる非アルコール性の脂肪肝という病気(NAFLD)があるが、今現在で最も多いその肝臓の病気を発症することになる。
14:28
そして、脂肪肝がひどくなると肝臓組織そのものに炎症が広がってくる。
その炎症が広がって、どんどん末期の状態になると今度は繊維化が起こる。セロトニンやエストロゲンが増えてどんどん細胞が硬くなってくる。
それが肝臓全体を覆うといよいよ「肝硬変」という状態になる。肝臓が非常に硬くなる状態。
15:00
肝硬変の最も多い原因が「非アルコール性脂肪肝」。これはまさに肝臓にプーファが溜まることが原因で最終的に肝臓が機能しなくなるというのが、現在の肝臓病の特徴。
15:20
このような肝臓障害には飽和脂肪酸がやはり有効。
肝臓障害の直接の原因はプーファなので、飽和脂肪酸で置き換えてあげるということ。あるいは、飽和脂肪酸そのものが糖のエネルギー代謝を高めて肝臓でのエネルギー代謝を復活させる、という作用が研究論文でも報告されるようになってる。
15:53
【脂肪の放出/リポリシス】
脂肪組織に元々蓄積してる脂肪が肝臓でデトックスされるのではなく、あるいは必要な組織でエネルギーとして使われるのではなく血液中に急に放出される脂肪の放出=リポリシスという。
16:18
どういう時に、急に脂肪組織に溜まってる脂肪が放出されるか。
特に脂肪滴の中でも中心部ではなく辺縁に蓄積してるプーファが血中に遊離脂肪酸として出ていく。
これは、糖質制限、ファスティング、ケトン食という低血糖を招くような極端な食事、あるいはプーファ、炎症の存在、またはそれ以外のストレスで。
16:52
ストレスは過剰なエネルギーを必要とする。=ストレス対応にはいつもよりも多くのエネルギーを必要とするので、低血糖になる。
そうすると、エピネフリン、アドレナリン、コルチゾール、グルカゴン、成長ホルモンというこれらも私は「リポリシスホルモン」と呼んでる。あるいは「シックネスパターン、シックネスホルモン」という。
これらが血中にたくさん産生される。
そうすると、このホルモンに反応した脂肪分解酵素(ホルモンセンシティブライペース/Hormone-Sensitive Lipase,HSL)が活性化してくる。
17:38
そして、脂肪組織に蓄積してる中性脂肪(トライアシルグリセロール)を分解して遊離脂肪酸として放出する。
もちろん、その時にグリセロールも一緒に放出される。
これが「リポリシス」という現象である。
17:57〈映像確認〉
図のように、グリセロールと脂肪酸が3つくっついた形が中性脂肪。
これが外れてしまう。その外れた脂肪酸を「遊離脂肪酸」という。
事実上、中性脂肪とは不飽和脂肪酸、オレイン酸、あるいはプーファしか結合しないので遊離脂肪酸はほとんどが一価不飽和脂肪酸かプーファであるということ。
18:25
通常、アルブミンと結合されて運搬されるが、これがフリーとなって血液中に行く状態が遊離脂肪酸と呼ばれるもので、あらゆる病気の原因となってる。
18:46
■リポリシスで放出された脂肪の運命
グリセロールは肝臓で再利用されてエネルギーとなるか糖新生の材料となる。
遊離脂肪酸はアルブミンと結合して血液を循環し、各組織へ届けられるか肝臓でデトックスされる。
問題は遊離脂肪酸がタンパクと結合もせず、血液中に浮いてしまうという状態。
プーファの遊離脂肪酸は様々な問題を引き起こすが、その中の一番大きな問題としては「鉄と反応する」ということ。フリーの鉄と反応して、脂質過酸化反応を引き起こすというのが、鉄とプーファのコンビネーションで最も恐ろしい反応。
19:42(症例)
*糖尿病の症例
『34歳男性が10年来糖尿病を患って、インシュリン投与を受けてる。昨日、AM2:00激しい震えを覚え発汗が激しかったので、翌日かかり医に診察を受けた。』
これは?
まず、「糖尿病でインシュリンを使用してる人で発汗・震えが出てきた。」というのはストレス反応。ストレス反応が出てきた時に何を疑うか?
20:15
これは、クリニック受診時に低血糖であった場合と、受診時に高血糖であった場合の2つのパターンがある。
これはいずれもストレス反応が起こる。
20:28
●低血糖の場合
クリニック受診時に低血糖であるという時の原因は何を疑うか?
これの最も多い原因としては「インシュリンの量が多すぎる」ということ。=インシュリン注射の量が適切ではないということ。
インシュリンの量が多すぎて低血糖になる。この時にアドレナリン、コルチゾール、グルカゴン、成長ホルモンが出てリポリシスが起こってる。
そういうストレス反応が起こってるパターン。
21:10
●高血糖の場合
もう一方は、高血糖になった場合。
高血糖の場合は、逆にインシュリンの量が少ないパターン。
インシュリンの量が少なくて、例えば血糖値が500や600になると脱水が起こる。
高血糖になると、糖は細胞から水を引いてくる。
そして、尿からたくさんの糖が出る。それで脱水症状になる。
この時にもショック症状が引き起こされる。
21:48
このように、上記のような2つのパターンがある。
これは、血糖が高いか低いかによって原因が異なる。全く真逆の原因でも同じ症状で受診するということ。
22:04
先述のリポリシスを引き起こすコルチゾール、アドレナリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、エストロゲンといったホルモンはホルモンセンシティブライペース(略称HSL)という酵素を活性化させて脂肪細胞の中の中性脂肪を分解していく。
そして、血液中にアラキドン酸、リノール酸、リノレイン酸、EPA、DHAというものを放出していくというものになる。
22:48
■遊離脂肪酸はプーファから
これは脂肪組織の辺縁から分解されていく。
そのプーファの中身・・・脂肪の表面にあるプーファから溶け出すが、特に末端に2つの炭素しかないオメガ3(カルボキシル基から反対のCから数えて3つ目に二重結合が出てくるもの)から最初に分解されていく。
ということは、こういったストレスがかかるとまずオメガ3でも特にDHA、EPAという最も鎖が長いが末端に炭素が2つしかないオメガ3が最初に分解されるということ。
23:46
その次に植物油脂であるオメガ6が分解されていく。
そして、次がオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)。
最後にリポリシスがあって放出されるのが飽和脂肪酸。
(順番)オメガ3(EPA、DHA)→オメガ6(植物油脂)→オレイン酸(一価不飽和脂肪酸)→飽和脂肪酸
24:05
なので、ピンチになると一番最初に私たちの血液中にドバッと出てくる遊離脂肪酸がオメガ3であるということ。
24:19
【アルデヒド】
リポリシスは何故危険なのかという話を再三してきたが、鉄との関連でいうと生理的条件で容易にアルデヒドを産生する。
熱、光、そして最も多いのが鉄との反応。
ハイドロキシルラジカルという、最も反応性の高い活性酸素とプーファの反応でアルデヒドという発ガン性の高いあらゆる慢性病の原因となる毒性物質を産生する。
24:59〈映像確認〉
■アルデヒドのできる過程(図示)
鉄との反応でプーファからアルデヒドができるチェーンリアクション(連鎖反応)を示したもの。
まず、一番上のプーファ。(赤丸部分)これはよく見ると、水素に繋がってる炭素の両端が二重結合(不飽和結合)。
それに囲まれてる水素のことを「ビスアリリックハイドロジェン」という。名前は覚えなくても良いが、形を見ておく。
《形》自分がくっついてるCと隣の両端が二重結合であるというような部分が最もCとの結合が非常に弱い部分。
ここがターゲットになる。
25:56
鉄、光、活性酸素種。特に、鉄が産生するハイドロキシルラジカル(最も強い活性酸素)で引き抜かれた場合に、引き抜かれたところに酸素が反応すると「脂質ラジカル」というものができる。
脂質ラジカルそのものは実はハイドロキシルラジカルと同じ作用をして、新しいプーファのビスアリリックハイドロジェンという最も結合の弱い水素を引き抜いて、また脂質ラジカルを作っていくという連鎖反応をどんどん繰り返していく。
その過程でアルデヒドが産生されるという仕組みになってる。
27:02
なので、プーファは自動的に一度H+が引き抜かれてしまうと、酸素があれば連鎖反応でどんどん脂質ラジカルができる。
そして、脂質ラジカルがどんどんアルデヒドができて、それはプーファがなくなるまでその反応が進んでいくという連鎖反応が起こる。
これを「プーファの自動酸化」という。
*自動酸化:酵素がなくても勝手にこのような一連の反応がどんどん自動的に進んでいく
27:50
ビスアリリックボンドというのは、水素が結合してる炭素の両端が二重結合を持ってるという形だが、オレイン酸はこれがゼロ。
一方のEPA(オメガ3の魚油に含まれてるもの)はビスアリリックボンドが4つもある。
DHAになるとビスアリリックボンドは5つ。
つまり、活性酸素、光などのターゲットになりやすい水素部分がEPAは4つ、DHAは5つあるということ。
そして、実際にDHAはオレイン酸より320倍自動酸化されやすいという実験結果が出てる。
28:45
EPA、DHAは私たちの体温(37.0℃)でも極めて不安定。
なので、私たちの体温で容易にプーファの自動酸化(=脂質過酸化反応)が進む。
つまり、これでアルデヒドがたくさんできるということ。
29:06
ちなみに、オレイン酸はこのビスアリリックボンドはないが、でもオレイン酸からでもアルデヒドは産生されることがわかってる。
29:16(二重結合の数の見直し)
二重結合の数・・・EPA、DHAがダントツで多い。
最も猛毒のアルデヒドをたくさん作るのが、プーファの中ではやはりEPA、DHAということ。
29:42
プーファからアルデヒドが産生されるが、これはオメガ3だろうがオメガ6であろうが同じ。
アルデヒドの種類が違うだけで、最終的にたくさんのアルデヒドができる。→ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド(お酒の代謝の中間産物)、アクロレイン、MDA、4HHE、4HNEといった代表的なアルデヒドができる。
30:18
このアルデヒドが何故まずいのか?
それは、このアルデヒドは特にタンパク質、DNA、リン脂質などに容易に結合し、その機能と構造を破壊していく。
なので、このようなアルデヒドがたくさんできて、例えばDNAにくっつくとこれは突然変異する。
私が『病はリポリシスから』という本を書いたが、放射線が怖いのは実はこのアルデヒドをたくさん作ってDNAを変性させていく=突然変異を起こすから。
放射線というのは、直接DNAを切るということでDNAの修復というのが起こることによって突然変異が起こる、と教科書レベルでも説明がされてる。
31:10
だけど、実はそれより怖いのが身体の中で放射線がプーファに当たることで、それによりアルデヒドが発生し、そのアルデヒドがどんどん自動酸化で増産されてこれがDNAにくっつくとDNAが突然変異を起こすということ。これが最も怖いこと。
31:37
ちなみに「グライオキサール」と呼ばれる、マヌカハニーにたくさん含まれるAGEも実はプーファの体内での自動酸化からも産生されるもの。
32:00〈映像確認〉
■アルデヒド(=過酸化脂質)の化学構造式の代表的なもの
アルデヒドの中でも「飽和アルデヒド」と呼ばれるものと、「不飽和アルデヒド」と呼ばれるものがある。
このいずれも形は違うがほぼ同じような作用を持ってる。
その作用とは・・・正常のタンパク質やDNAと結合して、その機能と構造を破壊する。その点ではアルデヒドの種類によらず一致した作用を持ってる。
32:45
そして、さらにその機能と構造を破壊するだけでなく、一度そのように変性した遺伝子やタンパク質、リン脂質は私たちのマクロファージが掃除する炎症ゴミになる。
その炎症ゴミを掃除しようとするが、プーファからできるアルデヒドそのものがマクロファージの消化作用をブロックすることで、マクロファージが炎症ゴミを掃除できない(なので炎症ゴミという)。それにより炎症がひたすら続く。
動脈硬化だけでなくアルツハイマー、糖尿病も全てアルデヒドが一度形成されてそれがゴミとなって蓄積していく。そういったことで起こる慢性炎症から慢性病が発生する。
34:04
アルデヒドというのは実は電子を奪う=電子を引き抜く。
タンパク質、DNA、リン脂質は逆に電子を与える物質。
なので、この電子の受け取りで結合しやすいということ。
34:28
分子中にマイナスの電荷を持つ物質、そういったものがアルデヒドに電子を引き抜かれてアルデヒドと結合する。
そして、機能と構造を変性してしまう。
特にタンパク質中の「システイン」「リジン」「ヒスチジン」と呼ばれるようなアミノ酸はアルデヒドのターゲットになりやすいアミノ酸。
あるいは、細胞構成リン脂質中に含まれるタンパク質(エタノールアミン、カルジオリピンなど特にミトコンドリアの膜のリン脂質)もアルデヒドのターゲットになりやすい。
35:15
また、DNAの塩基という部分の「グアニン」。こういった時にマイナスの電荷があるので、これにアルデヒドがくっつく。
35:34〈映像確認〉
ダイカーボニューズ?(35:34)と呼ばれるもの、不飽和アルデヒドといったものが様々なタンパク質や遺伝子とくっついていくという図(図示)
アルデヒドは遺伝子に結合して、そのアルデヒドが「グアニン」とくっつき「DNAアルデヒド結合体」ができて、これでDNAが正常に機能しなくなる。(これは『病はリポリシスから』の引用)
36:17
■4HHE
オメガ3からできる過酸化脂質アルデヒドの「4HHE」と呼ばれるもの。
このアルデヒドが膵臓から産生されるインシュリン(血液中の糖を細胞の中に入れる最も重要なホルモン)にダイレクトに結合する。
つまり、インシュリン中のシステイン、ヒスチジン、リジンと呼ばれるアミノ酸の部分に結合することで完全にインシュリンの機能を破壊していく。
そうすると、機能しないインシュリンがたくさん血液中に浮くので、当然血糖値は上昇していく。
なので、プーファを摂取したり、魚の油・EPAを過剰摂取すると、インシュリンが産生されても機能しないインシュリンに変わってしまう。その結果、血糖値上昇=糖尿病になる。
37:34(オメガ3やオメガ6の遺伝子との結合)
オメガ3系、オメガ6系のいずれもアルデヒドの形は多少は違うが構造は非常に似ている。
オメガ3であろうが、オメガ6であろうがいずれも同じようにDNAと結合する。
なので、オメガ6が良くてオメガ3が悪いとか、逆にオメガ3が良くてオメガ6が悪いというようなことは全くないということ。
38:09〈映像確認〉
■「HHE」・「HNE」と呼ばれるオメガ3とオメガ6からできるアルデヒドの構造式
・HHE(4ハイドロキシトランス2ヘキセナール):オメガ3からできるHHEと呼ばれるアルデヒド
・HNE(4ハイドロキシトランス2ノネナル):オメガ6からできるHNEと呼ばれるアルデヒド
これらの構造をよく見ると、ほとんど似てる。
実際に、生体内での作用もほぼ同じと言われてる。
38:52〈映像確認〉
アルデヒドはタンパク質に結合して構造機能を変化させる。
実際にアルツハイマー病の進行に関わるアルデヒド結合タンパク質の一覧(図示)。
様々な酵素にアルデヒドがくっつくことで機能と構造が変化する。それがアルツハイマー病の発症に関与してる。このことを2013年の論文に詳細に書かれてる。
39:24
たくさんの酵素が私たちの身体の中でダイナミックに作用してるが、その酵素の働きをブロックしてしまうのが、プーファからできる過酸化脂質(アルデヒド)の最大の悪影響と言っても良いかもしれない。
39:47〈映像確認〉
■MDA
糖尿病の人たちと健康な人たちの中のMDAの量(図示)
MDA=過酸化脂質の一つ
この、MDAの量がどれだけ違うのかのグラフにしたものが緑と黄色と赤のもの。
(緑)健常時
(黄)糖尿病と診断されてるが、まだ白内障ができてない段階
(赤)すでに白内障を発症してる進行した糖尿病の人
このグラフを見るとMDAの量は糖尿病が進行するほど上がっていくということがわかる。
グラフの右側のFBSと書いてるもの。これは空腹時血糖。血糖もMDAと比例して上がっていくということを示してる。
40:54
■MDAはオメガ3からできる
このMDAというアルデヒドだが、この上昇はフィッシュオイル投与による循環血液中のEPA濃度の上昇が原因ということを示す重要な臨床試験がある。
それは、関節リウマチ64名にランダムにフィッシュオイル、ビタミンE、ビタミンA、銅、セレニウムのサプリ、あるいは大豆油のプラセボを与えた実験を12週間行ったもの。
そうすると、フィッシュオイル投与分ではいくらビタミンEを併用してもMDAと呼ばれる血中のアルデヒドの量に変化はなかった。
そして、大豆油。これはオメガ6、植物油脂。このグループでは血中のMDA濃度は低下してきた。
つまり、これはフィッシュオイル投与によってMDAが発生してるということである。
42:02
MDAというのはフィッシュオイル(EPA、DHA)といったものがどれくらい私たちの身体に蓄積しているか、という一つの指標になるということを示してる(オメガ3の真実の中の一つの記事だが)。
つまり、MDAは実際はオメガ3からできる、ということ。
42:32
このマロンダイアルデヒド(malondialdehyde,MDA)は最低でも3つの二重結合を持つプーファからしか発生しない。
なので、二重結合が3つ以上=オメガ3、あるいはシードオイル(植物油脂)から代謝されるアラキドン酸(二重結合が4つ)。
つまり、オメガ3かシードオイルが酵素代謝されてできるアラキドン酸か。それ以外にはできない。
ほとんどはオメガ3から形成される代表的なアルデヒドとして「MDA(マロンダイアルデヒド)」がある。これを覚えておくこと。
43:24
このMDAもあらゆるタンパク質に結合する。
例えば脳の神経細胞のコレクションである神経線維を囲む髄鞘と呼ばれる鞘(絶縁体)がある。
その髄鞘のタンパク質に結合するということで、神経線維そのものがやられてしまう。これにより、正常の電気が流れなくなる。
それで脳炎や多発性硬化症という病態を引き起こす。
43:57
あるいは、小麦はリーキーガットを引き起こすが、リーキーガットを引き起こすタンパク質がある。それが「グルテン」。
グルテン以外にも小麦に含まれるタンパク質があるが、これにMDAがくっつくことで炎症ゴミになる。
あるいはLDLコレステロール、HDLコレステロールにMDAが結合すると、これも炎症ゴミとなる。
特にLDLにくっついたMDAは動脈硬化巣でたくさん認められる。
44:43
あるいは遺伝子の複製や、遺伝子の修復で必要な酵素などのタンパク質にもMDAはくっついて、遺伝子の正常な複製や修復をブロックする。
45:05
「変形性関節症」・・・関節が腫れて変形していく形。
実は関節にある軟骨のコラーゲンタンパクにもMDAは結合して、炎症を引き起こすことで変形性関節症を引き起こす。
45:24
なので、個々の病気を分類して覚えるのではなく、このような共通の原因があるということ。
特に「プーファ」。プーファからあらゆる慢性病が出てくるというのも、このアルデヒドを通して見ることではっきりと見えてくるはず。
45:49
二型糖尿病の人を測ると優位に血液中のMDA濃度が高いということが報告されてる。
つまり、糖尿病ではオメガ3の脂質過酸化反応が体内で進行してるということを示してる。
46:10
■オメガ3の過酸化脂質
先述のタンパク質にくっついて、タンパク質の機能・構造を変化させる、あるいは遺伝子と結合して突然変異を起こす。
それ以外にもこの物質そのものがシグナルとなり、炎症を引き起こす。あるいはインシュリン抵抗性という、細胞がインシュリンに反応しなくなる状態になる。いわゆる糖尿病(二型糖尿病と呼ばれるもの)を引き起こす。
その結果を招くシグナルになるということが示されてる。
46:51
「NFカッパーB」と呼ばれる炎症経路を活性化させて、一酸化窒素(ミトコンドリアにとって非常にダメージの大きいもの)を作る。
この一酸化窒素がペルオキシナイトライトになると細胞死を招く。
47:12
他にも「JNK」と呼ばれるような経路を活性化してインシュリン抵抗性を作ったり、活性酸素・活性窒素を発生させる。
47:27
したがって、この「オメガ3の過酸化脂質」がタンパク質や遺伝子に結合しなくても炎症を引き起こすということがわかってる。
47:39
■オメガ6やオメガ3からできるアルデヒドの処理
私たちの細胞の中で作られる「グルタチオン」、あるいは外から投与するものだが「カルノシン」と呼ばれるもの。
これは、具体的には「βアラニン」というアミノ酸が「ヒスチジン」というアミノ酸と結合した場合に「カルノシン」ができる。これはアルデヒドの処理能力は高い方である。
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あるいは、私たちの体内で産生する酵素としては「アルデヒド脱水素酵素」、「アルドース還元酵素」を私たちが作って、アルデヒドが発生すればこれをデトックスするという、私たちのメカニズムもある。
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ただ、こういった酵素の誘導もやはり過剰のアルデヒド発生には対応できない。そのため私たちの慢性病が進行してしまう。
48:49〈映像確認〉
■慢性病とアルデヒド
アルデヒドの量が多くなるほど様々な症状が出てくる(図示)。
さらに、加齢現象で出てくるシミ。シミは「リポファッシン(Lipofuscin)」と言われるもので、プーファが中心となり鉄とタンパク質が結合したもの。
ちなみに、顔にできる肝斑もリポファッシン。
このリポファッシンは皮膚のシミだけでなく、脳神経細胞や心筋細胞など全ての組織に実はできる。
なので、皮膚にシミができ始めてくるということは、実は私たちの内臓にもシミができ始めてるということ。
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■リポファッシン形成の実験
リポファッシンの形成について非常に興味深い実験がある。
①さらに15週間オメガ6中心のダイエット(食事)を与えた場合。
②亜麻仁油に含まれるリノレイン酸(オメガ3)が中心となったものを与えた場合。
③EPA、DHA(フィッシュオイル)を与えた食事。
これは、この3種類を比較して、どの食事が最もリポファッシン(シミ)ができたのかという実験。
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*肝臓でのリポファッシンの量を比べた結果
③EPA、DHAのダイエット(食事)は①オメガ6(植物油脂)や②亜麻仁油(リノレイン酸)ダイエットの3倍リポファッシン量ができてる。
脂質過酸化の指標である「TBARS」は類推値に過ぎないが、これはMDA(マロンダイアルデヒドと呼ばれるオメガ3からできるアルデヒド)の類推値と言われてる。
このMDAの類推値はEPA、DHAダイエットはオメガ6ダイエットの4倍という結果が出てる。
つまり、少なくともオメガ6より4倍酸化されやすいということ。
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なので、このEPA、DHAがプーファの中でもいかに危ないかというのを示したのがこの「リポファッシン」。
このように魚の油を摂取するということがいかに危険性かということを色んな角度から伝えてます。
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■リポファッシンの眼加齢現象
リポファッシンそのものが、プーファと鉄が中にある。
なので、どんどん自動酸化が進むので酸素を消費していく(シミは)。
そうなると、シミが沈着した局所で低酸素を引き起こし、周りの組織も酸素を引き抜かれて低酸素状態になる。そのように局所で乳酸を発生させて炎症線維化を引き起こす。
つまり、シミの周辺がだんだん硬くなっていくということ。
なので、顔や手などの皮膚にシミができた時のシミの周辺をよく見ると、ひきつれたりシワができやすくなってる。これは、酸素を周囲の組織から奪った結果、周りの組織に慢性炎症を引き起こしてるというサイン。
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だから、リポファッシンそのものができること自体が問題ではあるが、リポファッシンは周囲の組織に悪影響を与えるということ。
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欧米での成人の失明の原因の第一位として、「加齢性の黄斑変性症」がある。
網膜の中心部に黄斑と呼ばれる部分がある。黄斑というのは、私たちが「見よう」とした時に最も視力の源になる、一番大切な網膜の部分。この部分が変性していく。
これはどのように変性していくのか?という話。
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網膜は、網膜の下の部分に「網膜色素上皮細胞」というものがズラッと並んでる。
実は、この網膜上皮細胞はマクロファージと非常によく似た働きをしてる。つまり、ゴミが発生したらそれを速やかに処理するという役割がある。
この、網膜が光を感知するところ。この部分の細胞は他の細胞よりDHA量が高いことがわかってる。つまり、酸素やあまりに強い光と反応するとアルデヒドが発生する。
アルデヒドが発生すると非常にまずいので、アルデヒドと結合した、発生して変性した細胞を網膜上皮細胞がせっせと消化しては分解してリサイクルしてる(糖のエネルギー代謝が回っていればの話)のがこの網膜での形態形成維持と呼ばれるもの。
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問題はリポファッシン(シミ)。
このシミは網膜にも蓄積していく。そうすると、網膜上皮細胞そのものがやられてしまう。
ということは、このDHAが変性させた(=DHAからできた)MDAなどのアルデヒドと結合した細胞がどんどん溜まっていく=炎症ゴミが溜まっていくということになる。
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さらに、先述でLDLにMDAなどのアルデヒドがくっつくという話をしたが、このようなLDL(プーファの結合体)ももし網膜に到達すると、網膜上皮細胞の食作用をブロックすることがわかってる。
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網膜上皮細胞はマクロファージと同じような働きをするが、この食作用も酵素を使う。
この酵素もDHAのアルデヒドで酵素の形が変われば、食作用(分解作用)能力も低下してくる。
それにより、リポファッシンがますます蓄積していき、網膜障害が起こる。
これが実は「加齢性黄斑変性症」である。現代の失明の最も多い原因。
これは医学では原因不明とされてるが、明らかに現代人のプーファ過剰によるもの。プーファ過剰により失明が引き起こされる。これに、リポファッシンが絡むということを覚えておいて。
fin
